大学駅伝のプロ化に違和感

 さらに青山学院にとって幸運だったのは、神野の他に、久保田和真(九州学院)、小椋裕介(札幌山の手)といった全国トップクラスの選手が同じ学年に入った他、渡邉利典(東北)、村井駿(西武台千葉)といった有力選手も入学し、一学年下には、神野、久保田、小椋と並んで「四天王」と呼ばれるようになる一色恭志(豊川)も入ったことだ。

早稲田の故中村清監督は、瀬古利彦という“神様の贈り物”を得て、11年間遠ざかっていた指導者への復活を果たしたが、神野も原監督にとって“神様の贈り物”だったと言えよう。

 伝統校でもあり、ブランド校でもある早稲田がなぜ青山学院に勝てないかと言うと、一番大きな要因は、スポーツ推薦の枠が少ないことだ。青山学院も含め、各大学とも10〜15人の駅伝選手の推薦枠を持っている。

 これに対して早稲田の競走部の長距離選手のスポーツ推薦枠は、(公表されていないが)3人と言われる。しかも全国大会で3位以内が条件だが、インターハイなどはケニアの留学生たちが上位を独占してしまう。国体はケニア留学生があまり出場しないので、日本人でも高校3年生くらいになれば3位以内を狙えるが、青田買いで有力選手は高校2年くらいで進路が決まってしまっている。

 早稲田にはAO入試という道もあるが、AO入試の場合、合格は確約できない。「スポーツ推薦は無理だけれど、AO入試を受けて下さい。ただ合格は確約できません」と言って勧誘しても、有力選手はスポーツ推薦で合格を約束してくれる他大学に行ってしまう。

 また青山学院をはじめとする多くの大学が、駅伝選手に対する奨学金(授業料免除)制度や栄養費支給制度を持っているが、早稲田にはそういう制度もない。そのためなかなか有力選手が採れず、特に2017年度は、新入生の5000mの上位5人の平均タイムが14分26秒37と、青山学院(14分6秒77)に大きく水をあけられ、全体でも8番目くらいだった。

 以前、早稲田が箱根駅伝で優勝できなかった時、ゴール地点にやって来た総長だったか大学の幹部だったかは忘れたが、「早稲田は気合が入っていない!」と叱咤したという話を聞いたことがあるが、「それはあなたがたが勝てる制度にしていないのが一番の原因で、監督や選手だけを責めるのはお門違いでしょ」と言いたかった。

2019年1月1日 6時0分
http://news.livedoor.com/lite/article_detail/15823736/