● 箱根ランナーの原石は そもそも地方にいる

 学生スポーツの華、箱根駅伝は関東学生陸上競技連盟が主催している大会だ。「関東大会」にすぎないわけだが、その人気は「全国大会」である全日本大学駅伝を凌駕している。そのため、ファンや関係者から度々、“全国化待望論”が挙がっていた。昨年11月には日刊スポーツが、「第100回の記念大会となる2024年1月の箱根駅伝で全国化を検討している」と報じたこともあり、一部で大きな話題となった。

 箱根駅伝の「全国化」は、地方大学にとって”夢への扉”になるのか。それとも日本長距離界においての“パンドラの箱”なのか。

 まずは全国化されたときのシミュレーションをしてみよう。箱根駅伝は関東の大学しか出場できないが、その舞台を目指す選手は全国から集まっている。今大会(第95回)の登録選手を出身高校による都道府県別で見てみると、千葉県が最多の37名。以下、静岡21名、兵庫19名、埼玉18名、愛知17名、熊本17名と続いている(※データは『箱根駅伝公式ガイドブック2019』を参照)。

 もし地元近隣の有力選手を一気に集めることができれば、東海、関西、九州などは青学大や東海大に匹敵するような強力チームができあがっても不思議はない。たとえば、知名度抜群の青学大・原晋監督が故郷・広島の大学で指揮を執るようになれば、広島には世羅、隣の岡山には倉敷という近年の全国高校駅伝で優勝している超強豪校もあり、おもしろいチームができるだろう。

 既存の大学でいうと、福岡大、中京大、関西大など、かつての“雄”が「箱根駅伝」という魔力で復活を果たす可能性もある。地方大学の活性化という意味では、大いに役立つはずだ。そして地方が沸くことで箱根駅伝の全国的な人気はさらに高まると予想する。

● 箱根駅伝「全国化」実現への高いハードル

 では、地方大学が出場枠をゲットするには、どういう方式がいいのか。

 箱根駅伝は10月中旬に予選会があり、1月2・3日に本戦が行われる。そして、11月上旬に全日本大学駅伝(以下、全日本)がある。関東以外の大学にとっては、全日本が最大目標となるため、10月中旬の予選会に出場するのはスケジュール的に厳しい。

 そこで提案したいのが、関東以外の大学は全日本を箱根予選会にするかたちだ。全日本は8位以内に入ると翌年度の「シード権」を獲得できるが、関東以外の大学が8位以内に入った場合には、「箱根への出場権」も与えるのはいかがだろうか。

 箱根予選会をギリギリ通過するようなレベルでは、本戦で戦うのは難しい。しかし、関東勢もガチンコで戦う全日本で8位以内に入る実力があれば、本戦でも上位で争えるスピードは十分にある。そして本戦で10位以内に入れば、関東勢と同様に「シード権」を与えることで、地方から新たな箱根常連校が誕生する期待感もある。

 地方の大学にとっては、全日本を戦う意味がもう1つ増えるわけで、モチベーションがさらに高まり、全日本の戦いはよりヒートアップするはずだ。

 ただし、箱根駅伝の出場チームを増やすには、警視庁・神奈川県警の許可が必要になるため、1〜2校の増枠でも時間を要する。全日本で地方大学が出場権を得た場合は、その分、予選会下位通過校の枠を減らすかたちになるだろう。

 現状を考えると、今年の全日本大学駅伝は関東勢が上位15位までを占めており、地方大学の“参入”は簡単なことではない。出場権を獲得したとしても、箱根駅伝は全10区間が20km以上という長丁場で、山もある。上位争いするための戦力を整えるには時間もかかるだろう。

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1/3(木) 6:00配信
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