2018年7月で創刊50周年の節目を迎えた『週刊少年ジャンプ』。来年には新元号となり、平成が終わりに近づくこのタイミングでの到達に、やはり「何か」を持っている雑誌なのだと思わせる。1

995年には653万部という最高発行部数を記録し、連載漫画に「最も多く発行された単一作家によるコミックシリーズ」としてギネス記録を持つ
『ONE PIECE』など多くのヒット作を擁していることもあり、華々しいイメージを抱く向きも多いだろう。
しかし、光あるところには闇がある。長い歴史の中には数々のトラブルも存在し、決して順風満帆ではなかったのだ。
『少年ジャンプ 暗黒50年史(マイウェイムック)』(マイウェイ出版)では『ジャンプ』の歴史を通覧しながら、その「闇」について触れている。

そもそも『ジャンプ』は『少年マガジン』などの競合他誌よりも後発であり、創刊当初は作家を揃えるにも苦労したという。
その中で『ジャンプ』を支えた連載漫画が『ハレンチ学園』と『男一匹ガキ大将』だ。
この2作品は草創期の代表作であるがゆえに、同誌の「裏側」を知る上でも不可欠の存在である。

まず『ハレンチ学園』だが、作者の永井豪氏は『マジンガーZ』や『デビルマン』などの作品で知られる日本でも屈指のレジェンド作家だ。
その永井氏が『ジャンプ』で描いた『ハレンチ学園』は、エロを前面に押し出したギャグ漫画だった。
そして本作の主人公が作中で行なったのが「モーレツごっこ」。早い話が「スカートめくり」である。
これが子供たちの間で広まり、全国の学校で「スカートめくり」が流行してしまったのだ。
このことを問題視したPTAや教育委員会は編集部に対して猛烈な抗議を展開。テレビのワイドショーにも取り上げられ、社会問題化した。
しかしこの抗議行動に対し、編集部は一貫して永井氏を擁護。応援・激励の手紙や電話も多く寄せられたという。

そして『男一匹ガキ大将』は、クレームではなく『ジャンプ』のシステムに関係する。
作者の本宮ひろ志氏は『俺の空』や『サラリーマン金太郎』などのヒット作を生み出した大御所。
貸本漫画でデビューした本宮氏は『ジャンプ』で『男一匹ガキ大将』を連載するや好評を博し、一躍人気作家に。
しかし一方の看板作『ハレンチ学園』の永井豪氏が他誌で連載を始めたことから本宮氏の引き抜きを恐れた編集部が氏と「専属契約」を結ぶ。これが『ジャンプ』における専属契約の始まりとされる。
専属契約とは他誌で描かないことを条件に契約料を支払うシステムのこと。
これは原稿料とは別の支払いであり漫画家の生活は安定するが、漫画家の自由を束縛する側面もある。
また安定した環境が漫画家のハングリーさを奪うという見方も。当時のやむをえない状況で生まれたものではあっても、やはり専属契約は賛否の分かれるシステムなのである。

本書は他にも「『私立極道高校』実名無断掲載事件」など、さまざまな「闇」を掲載している。しかしそういうネガティブな内容ばかりが書かれているわけではない。
特に創刊時から2018年までの新連載および終了作品を列挙したデータベースは、非常に有益な資料だ。
そして『ジャンプ』の名を冠して生まれ、消えていったさまざまな姉妹誌の存在など、愛読していた読者なら懐かしさを覚えるはず。
確かに本書には「ジャンプ愛」がギッシリ詰まっている。「光」と「闇」の両方を識ることで、きっと『週刊少年ジャンプ』の本質が見えてくるに違いない。

http://news.livedoor.com/article/detail/15778627/
2018年12月22日 15時0分 ダ・ヴィンチニュース