2018年、米大リーグのア・リーグ新人王に輝いた大谷翔平(24)。開幕前に私は「いい選手だが、打者としては成功しない」と見た。

メジャーの投手は大谷の打撃フォームからすぐに弱点を見つけると予想。メジャーには大谷のような打者がゴロゴロいる。
打者として生き残るには、大変な競争を強いられると考えていた。

投手としても懸念はあった。100マイル(161キロ)を超す速球を投げ、いいスライダーがあれば、メジャーで生き残るチャンスは十分だ。
それでもメジャーの打者は1番から9番までホームランを打つ力を持っている。
日本のプロ野球なら各チームのパワーヒッター2、3人さえ気をつければ何とかなるが、メジャーはそうはいかない、と踏んでいた。

投打二刀流などという考えを捨てるべきだとも言った。打者として成功し、なおかつ投手としても成功するためには、ものすごい体力を求められる。
それが救援投手に回ったとしても負担は同じだからだ。

さらにいえば、ベーブ・ルースと比較することも妥当ではないと考えていた。
ルースは714本塁打を放ったレジェンド。
大谷は当時メジャーで1本のヒットさえ打っていなかった。
ルースはメジャーで94勝、大谷はゼロ。
そうした中で大谷をルースと比較するのは、過大なプレッシャーをかけるだけだと思っていた。

ところが大谷は1年目から大成功を収めた。素晴らしい1年だった。開幕前、投手としては制球がままならず、打者としては空振りの連続。
普通なら半年間マイナー暮らしといわれてもおかしくない状態だったが、打撃コーチから足を上げない打法を勧められると、一気に問題を解消。
秋にトミー・ジョン手術が必要と宣告されたあとも打者として出続け、計22本塁打、盗塁も10記録した。
終盤には苦手とされていた左投手からも特大の本塁打を放った。

私も左打者だったから、左打者が左投手を打てないという議論はバカげていると思ってきた。左投手と対戦した場合、私は右投手より長くボールを見ることができた。
反対方向へのヒットの打ち方も覚えた。
メジャー史上偉大な打者はみな、左打ちだ。テッド・ウィリアムズ、ベーブ・ルース、トニー・グイン、ロッド・カルー。

大谷がいかに素早くメジャーにアジャスト(適応)したかについては、ひたすら感心するしかない。逆境になればなるほど、新たな力を発揮できるのは天性か。
酒は飲まずタバコは吸わない。自由時間は英語を勉強。ガールフレンドもいない。巨人のキャンプに初めてやってきたときの桑田真澄を思い出す。
彼もメジャーに憧れ、いつも英語の勉強をしていた。

ただし、いまだに大谷が新人王にふさわしかったとは思わない。個人的にはア・リーグの新人王はヤンキースのミゲル・アンドゥハー三塁手(23)が取るべきだったと思う。

誰もが大谷の100年ぶりの二刀流挑戦に夢中になったが、アンドゥハーはニューヨークというマスコミの目が非常に厳しい環境の中で、149試合に出場し打率・297、27本塁打、92打点。
大谷は105試合、22本塁打、62打点だった。
アンドゥハーの方がチームにとって価値のある仕事をしたと信じている。

■ウォーレン・クロマティ(Warren Cromartie) 1953年9月29日生まれ。
米フロリダ州マイアミビーチ出身。大リーグのモントリオール・エクスポズから83年オフに巨人入団。
89年に打率・378で首位打者とMVPに輝き、7年間在籍した巨人で球団史上最強の助っ人といわれる。
外野席のファンに「バンザイ」を促すパフォーマンスでも有名。左投左打。
現在はモントリオールにMLBのチームを呼び戻す運動のリーダー。2年前から東京在住。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181214-00000013-ykf-spo
12/14(金) 16:56配信