森保ジャパンで台頭してきたMF南野、中島、堂安を「新ビッグ3」と称するのは、いささか早すぎたと感じている。正直に言うと、私もすでに原稿に1度、「新ビッグ3」という表現を使ってしまった。旧「ビッグ3」の筆頭・本田が代表から引退し、香川、岡崎も森保ジャパンにいまだ招集されていない中、若い3人が2列目にそろって台頭したため、その称号が出てきたのは自然だった。しかし、前任の3人が日本代表で背負ってきたものを取材の中で感じていただけに、彼らと比較するのは早すぎたと反省している。

 スポーツ報知で「ビッグ3」の表現が初めて使われたのは、ハリルホジッチ監督の就任初戦となった15年3月27日のチュニジア戦(大分)後だ。新たなチーム作りに着手しようとしていたハリルは、この試合で本田、香川、岡崎をベンチスタートとした。しかし途中出場から岡崎と本田がゴールを決め、香川も数々のチャンスを演出。格の違いを見せつけ、チームを勝利に導いたことがきっかけだった。

 彼らが「ビッグ3」と称賛されたのは、すさまじい期待と重圧の中で、日本代表の中心を担ってきたからだ。14年のブラジルW杯、1次リーグ敗退が決まった翌日。試合後に一睡もできなかったであろう本田は目が落ちくぼみ、生気が抜け落ちていた。彼が感じていた責任感の強さとショックの大きさは、十分すぎるほど伝わってきた。

15年のアジア杯・準々決勝のUAE戦、PK戦6人目のキッカーとして失敗し、“戦犯”となった香川の落胆ぶりも忘れられない。試合後、わずか50センチほどの至近距離で話を聞いたが、ショックを隠しきれない背番号10の声はか細く、ほとんど聞き取れなかった。「申し訳ない…」と繰り返していた小さなつぶやきだけが思い出される。

 しかしそんな数々のショックを乗り越え、今年のロシアW杯でベスト16進出に貢献した彼らは、やはり「ビッグ3」と呼ぶにふさわしかった。今後、南野、中島、堂安の3人が日本代表の中心となっていく過程では、来年1月のアジア杯や22年カタールW杯のアジア予選で数々の重圧と向き合うことになる。結果を出せず、批判にさらされることもあるかもしれない。毎試合ゴールを求められ、無得点なら「不発」と書かれる。若い彼らには、そんな重圧とも向き合う準備が必要だ。

 3人の中でも最も若い20歳の堂安に「今後は日本代表で活躍できなければ、不発と書かれたり、批判される立場になる可能性がある。その準備はできているか?」という質問を投げかけてみた。すると「もちろん、上等ですよ。第3者の意見は尊重します。それ(批判)を次の試合へのモチベーションにしますよ。黙って見ておけよ、という感じで」と頼もしい答えが返ってきた。日本代表がW杯でベスト16以上の結果を出すためには、旧ビッグ3以上の存在が出てくることは不可欠だ。若い3人には「新ビッグ3」などという二番煎じではなく、突き抜けた存在への成長を期待したい。そのときまでには、もっとぴったりの称号を考えておきたい。(サッカー担当・金川誉)

11/21(水) 16:03配信
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