サッカーの“大迫半端ない”が流行語になったが、マラソンの大迫も半端ない。

 シカゴ・マラソンで大迫傑(すぐる)(27)が2時間5分50秒で3位に入った。2月の東京マラソンで16年ぶりに日本記録を更新した設楽(したら)悠太(26)の記録を21秒短縮した大迫は、設楽に続き、日本実業団陸上競技連合から1億円の褒賞金を授与された。

 快走の秘密も気になるが、その話の前に、今大会に際して日本陸上競技連盟がブチ上げた珍妙な“プロジェクト”について触れておく。

“キメラ”と名づけられたこの新プロジェクトは、陸連公式サイトに曰く〈競技者がベストパフォーマンスを達成するうえで大きな影響を及ぼすメディアの力を、よりポジティブな方向性に生かしていけるような仕組み〉を作る、というものだ。

 スポーツ紙陸上担当記者が語る。

「9月16日に記者を集めて説明会が行われました。要するに、ベルリンなどワールドマラソンメジャーズと呼ばれる国際大会に“従軍記者”を派遣するというのです。各回5名程度で、希望者は“意気込み”を書いて提出を、とのことでした。その第1弾が今回のシカゴ。陸連は多数の希望者の中から選抜するつもりだったようですが……」

 蓋を開けると、希望したのはたった2名だった。

「アゴアシ付きは魅力ですけど、取材対象者である陸連に金銭的負担をしてもらうというのが社内倫理規定に抵触する社が多かったみたいです。タダより怖いものはないですからね」

 昨今はスポーツ界でスキャンダルが続発しているが、

「陸上界も御多分に漏れず、瀬古さん(マラソン強化戦略プロジェクトリーダー)のセクハラ発言や、競歩選手の強化費不正申請、日体大陸上部の暴力事件などいろいろ噴出しています。いらん借りを作って筆を鈍らせるわけにはいきません」

■税込み2万8080円

 そんなこんなで今大会、陸連の思惑通りにはメディアは集まらなかったが、皮肉なことにそこで日本新が出た。悲しいかな、大迫の快走を激写したカメラマンもほぼ皆無だが、数少ない現場映像を漁ると、そこには奇妙な現象が写っていた。

 上位選手のほとんどが同じシューズを履いていたのだ。30キロ地点で形成された先頭集団を見ると、9人のうち実に8人がオレンジの厚底シューズを履いていた。

 ナイキ製である。

 ナイキ所属の大迫ももちろんこのシューズを履いていた。いったいどんなシューズなのか。

「マラソンシューズは、“いかに薄く作るか”で各社鎬(しのぎ)を削っているのですが、ナイキだけは逆で、踵(かかと)が3センチ以上もある厚底の開発を進めているのです」

 と陸連関係者が明かす。

 靴底に特殊なカーボンファイバー製プレートを埋め込んでおり、足が疲れない。それどころか、坂道を下っているかのような推進力を感じるのだとか。“ドーピングシューズ”なんて渾名もある。

「開発の中心的存在のキプチョゲが9月のベルリン・マラソンで人類初の2時間1分台をマーク。“初めて履いた瞬間に惚れた”という大迫も“厚底信者”です。その大迫以上に心酔しているのが設楽で、“厚底じゃないと走れない”とまで言い切っています」

 シューズは「ヴェイパーフライ4%」という名で市販されており、お値段は税込み2万8080円。市民ランナー垂涎の的とあって品薄状態らしいが、スポーツの秋に一足いかが? 

「週刊新潮」2018年10月18日号 掲載

10/21(日) 5:58配信 デイリー新潮
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20181021-00550299-shincho-spo