https://sports.yahoo.co.jp/column/detail/201306050014-spnavi
楽天助っ人マギーの魅力 選手、人間、父としての姿

あいさつは目を合わせて会釈をする。質問には立ち止まって答える――。
「紳士的」「誠実」。彼と接するすべての人が彼の印象を聞かれると、
まずこう答える。

プライドを捨て日本野球に適応

マギーは、米国・カリフォルニア州出身。1982年生まれの今年31歳で、
03年にドラフト10巡目でシカゴ・カブスに入団した。08年にメジャーへ
初昇格し、10年、ブリュワーズ時代に9打席連続安打を放つなど、この年の
地元記者が選ぶチームMVPに選ばれた。しかし12年、負傷したA・ロドリ
ゲスの代役としてパイレーツからヤンキースへトレード移籍するも成績は振る
わず、出場試合も減った。30歳と野球選手として一番脂がのっている時期、
出場機会を得るために新天地を求めたマギーに、日本球界から声がかかる。そ
のひとつが楽天だった。

 しかしマギーは、開幕前のオープン戦で打率が2割と苦しんだ。ここで実績
十分の元メジャーリーガーは、毎日のように田代富雄・打撃コーチにアドバイ
スを求め、真摯(しんし)に日本野球と向き合った。

本人は詳細こそ明かさないが、打席に入ったときの気持ちや課題、相手投手の
特徴などをつづった「マギーノート」があるという。文頭でも触れた「誠実」
というマギーの人物像を表す言葉には、こういった野球に取り組む姿勢からも
きている。大物助っ人が来日すると、プライドから我流を突き通し、日本野
球になじめないまま期待を裏切るということが往々にして起こるが、マギー
にそれは当てはまらない。逆に必死に日本野球に適応しようと日々努力する
姿は、日本人選手にとってもこの上ない見本となっている。

父親として強くありたい――

 マギーの人物像を語る上で欠かせないのが、家族の存在である。妻と一男一
女の4人家族。新天地を決める際、マギーが一番気にかけていたのは、先天性
の脳障害と闘う今年6歳になった長男マッケイル君の存在だった。マッケイル
君にとって日本で生活することが良いことなのか、日本の環境になじめるのか、
マギーは悩んだという。そこで自ら、日本の環境について調べ、球団とも話し
合い、サポートの確約を得た。そして家族と日本に来ることを決断した。

マギーは、全米脳障害連合のメンバーとしても活動している。09年、マッケ
イル君が連合代表として始球式を務めた試合で、代打本塁打を放ったというの
は有名な話だ。その他、チャリティーマッチを開催するなど、積極的に脳障害
と闘う人々のサポートを続けている。

彼の野球に対する真摯な姿勢は、「マッケイルの父親として強くありたい」と
いう息子への思いを体現する、最も重要な手段ひとつなのかもしれない。