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日米の違いを感じた点は?

ーーー球場を訪れると球団のベースボールオフィスサイド(チーム運営)とビジネスオフィスサイド(経営)が明確に分かれていて、ベースボールサイドはスタッフがせいぜい常時15人くらいしかいないけど、ビジネスサイドには200人くらいいるんです。

これが最初に行って、いちばん驚いたことですね。日本の球団の事務所には何度も行ったことはあるけど規模が違うので驚きましたね。

日米の球場では何が違うのか?

ーーーアメリカでは半分くらいは試合を見ていない人がいると言われます。例えば企業はお得意さんが好きなチームの球場のVIPルームを借りてミーティングをして、契約後はパーティーをするとか、球場の使い方が違います。

それに野球を見るために行くっていう感覚ではないんですよね。時間を持て余した時に家族で行けるところとしてレストランと同じ感覚で行くんですよ。

例えばマイナーリーグの球団ではイニング間の催しもので子どもたちを球場の中に入れて走らせるようなイベントを独自にやっている。そうすると家族で行って、子どもたちは野球に興味が無くてもイベントがあるとグラウンドに出たり外野にある滑り台で遊んだりして、お父さん、お母さんはビールを飲みながらホットドッグを食べてという構図があります。

それに対して、やっぱりまだまだ日本の野球ってかたいなと思いますね。

ーーーアメリカの学生スポーツの試合を見に行くと、必ずファンというか一般の人が見られるゾーンを大学も高校も持っています。日本で観客席がある高校の体育館はないですよね。
やっぱり教育で見せるものではないという閉じられた感覚があるんですけど、アメリカの場合、スポーツはやる人もいるし、見る人もいる、どの立場からもしっかり成り立っているという違いは大きいです。

それにアメリカの高校や大学の試合では飲み物とか食べ物とかTシャツとかグッズを売って、それを部費にしてとさまざまやっている。あれも教育の一環だと思うんです。でも日本ではそれをよしとしない風潮がありますよね。

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ーーー今はプロ野球もチケットが手に入らないくらいの人気があるんですけど、今後の懸念として人口が減少する中でどの層をどれくらい球場に引き込むと球団として採算が取れるのかということがあります。人口が減っている部分を埋めるには、日本以外の野球熱をあげないといけない。
そう考えるとアジア、特に中国の人たちに野球を理解してもらいプレーしてもらう環境をつくれるかどうかです。中国人の1割でも日本の人口ですから。そうしないと20年たたないうちにメジャーリーグに飲み込まれて、まるでマイナー組織みたいな扱いになる可能性もゼロではないと思います。

大リーグがさらに規模を拡大しようとすると、アジアのマーケットしか狙うところはないので。

日本としてはアジアでリーグをつくって、台湾や韓国と試合を1か月間組んで、アジアというのを一つにしていくのが、この数年後、10年前後くらいには必要になってくるだろうと思います。

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ZOZOの社長が球団経営に意欲を示したという話がありましたけど、日本で球団を持って宣伝したいと思ってくれるような会社ってこれから減ると思うんですよ。パイが減っていくので世界を見据えないといけないけど、
そうするとプロ野球で宣伝するよりもeスポーツのようなものに投資したほうが見てくれる人の数が明らかに違うので、これは野球界の衰退につながると思うんです。

これからはスポーツだけでは成立しないと思うので医療や自治体とのコラボレーションが重要だと思います。

例えばロッククライミングなんかは、特別にいい地域が日本のどこかにあるはずで、地の利を生かして、ここはこのスポーツに最適というものを明確にしていくと、日本のスポーツはもっともっとビジネスとして、消滅の可能性があると言われるよう街を成長させるくらいの可能性も秘めていると思います。

https://www3.nhk.or.jp/news/business_tokushu/2018_1012.html