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最大5人(外国籍枠3+アジア枠1+提携国枠1)という現行の外国人枠が、近い将来、外国籍枠5+提携国枠1に拡大される見込みとのこと。

 欧州では、3人だった外国人枠は、「ボスマン判決」が施行された96-97シーズンを機に事実上、撤廃された。かれこれ20年以上も前の話になるが、欧州を基準にすると、いまだ外国人枠が存在する日本が先進的ではない国に見える。

 とはいえ、欧州と日本とではクラブサッカーを取り巻く社会的背景が違う。ボスマン判決は、EU内での職業選択の自由に基づく裁定だった。選手が域内のクラブを自由に往来できないのはEUの精神に反するとの大義があった。

 その恩恵にあずかったのがチャンピオンズリーグ(CL)だ。現在の興隆は、ボスマン判決を抜きに語れない。

 日本では、枠の拡大を機に何が変わるのか。それはボスマン判決後の欧州を振り返ることで、推測することができる。

 欧州はその結果、ビッグクラブ優先の格差社会が誕生した。クラブの年間予算と結果は、ほぼ一致を見ることになった。レアル・マドリーとバルセロナ。そしてバイエルンと少し前までのマンU。それにチェルシー、最近のマンC、パリSGといった成金系金満クラブを加えた数チームを軸に現在のCLは回っている。番狂わせの数は年々減少。ボスマン判決とそれは密接な関係にある。

 弱者が強者に立ち向かっていった一番の例は、94-95シーズンのCLを制したアヤックスだ。ビッグクラブに予算規模で大きく劣るこのチームの優勝は、番狂わせそのものだった。

 アヤックスは翌、95-96にも決勝に進出。ユベントス相手に延長PKで涙したが、このシーズンまでは十分、戦うことはできていた。だが、翌シーズン(96-97)、ボスマン判決の施行とともにアヤックスは草刈場となった。有力選手を次々と奪い取られ、CLではベスト4進出を果たすのが精一杯。準決勝でユベントスに通算2対6で大敗し、舞台から去る姿は哀れを誘った。アヤックスこそが、外国人枠撤廃の影響を最も受けたチームと言えた。

 アヤックスをはじめとするオランダのチームは、第3諸国から好素材を見つけ出し、育て、そして欧州のビッグクラブに売りさばく中継貿易のようなスタイルで欧州サッカー界に君臨してきた。育成のスペシャリストとして欧州内における地位を確立したが、その色も96-97を機に年々褪せていった。

 とはいえ、ビッグクラブではないチームがその間隙を突くケースは、ボスマン判決の施行後も目に止まった。01-02シーズン、レアル・マドリー、バルサを抑え、スペインリーグを制したデポルティーボだ。

 CLでは03-04のベスト4が最高位になるが、クラブの予算規模を考えれば画期的な出来事といえた。

 目利きのスカウトが、リバウド、マウロ・シウバ、ベベートといった好選手を次々に獲得。実践していたサッカーも効率的かつ攻撃的で、その快進撃は高い必然性に支えられていた。

 それから10数年経ったいま、第2のデポルティーボを見つけることはできない。そうなってしまった一番の理由は、ビッククラブに穴がなくなったからだ。かつては穴だらけ。油断しまくりで、弱者に付け入る隙を与えていたが、サッカーの中身を含め、大雑把さは次第に影を潜め、きがつけばとりつく島はなくなった

つづく

杉山茂樹 | スポーツライター
9/30(日) 3:32
https://news.yahoo.co.jp/byline/sugiyamashigeki/20180930-00098762/