2018年09月10日 08時43分
 貧困問題について考えるシンポジウムが8日、千葉県弁護士会館(千葉市中央区)で開かれた。生活保護の実情を描いた漫画「健康で文化的な最低限度の生活」(小学館)の作者で、柏市出身の柏木ハルコさんが、生活保護を巡る現場の課題などについて講演した。

 2014年に連載が始まった漫画は、フジテレビ系で放送中の同名ドラマの原作。生活保護受給者を支援したり相談に応じたりする新人ケースワーカーが様々な受給者に向き合う物語だ。

 講演で柏木さんは「東日本大震災を機に社会問題に目を向け、課題が多い生活保護の現場を描こうと思った」と説明。約2年間、ケースワーカーの研修や役所の窓口に通って取材を重ねる中、
人手不足のため大学を卒業したばかりの新人職員が乏しい知識のまま現場に出ざるを得なかったり、受給者が複雑な事情を打ち明けにくかったりする現実がわかったという。

 ドラマの放送開始後、ケースワーカーから「現実はもっと難しい」「主人公が自分と重なる」といった声が相次いで寄せられているといい、柏木さんは「生活困窮者だけでなく、疲弊してしまう職員など色々なテーマを取り上げていければ」と語った。

 続いて生活保護を受給している10代の男子専門学生が自身の経験を紹介。借金を抱えていた父親を高校時代に病気で亡くした後、受給するようになったという。「なぜ自分ばかりが」と思うこともあったが、「今はたくさんの人に助けてもらっている。不幸せだとは思わない」と話した。

https://www.yomiuri.co.jp/national/20180909-OYT1T50032.html