TBSの社員が家出中の10代前半の少女を自宅に連れ込み、「未成年者誘拐」容疑で逮捕された。事件の第一報を報じたのがTBSの「JNNフラッシュニュース」だったことから、“身内に厳しく毅然とした報道だった”という評価もあるが、裏側はそんなきれいごとではないようで──。

 逮捕されたのはTBS映画・アニメ事業部で宣伝プロデューサーを務めていた余卿(よきょう)容疑者(30)。中国出身で大阪大学、東大大学院出身というエリートだ。

 被害者の少女は静岡出身の中学1年生。余容疑者はSNSを通じて知り合い、渋谷区の自宅に連れ込んでいた。8月中旬から長期休暇を取って少女と札幌へ“逃避行”したところで追跡していた静岡県警に現行犯逮捕された(9月2日)。

 不自然なのはここからだ。TBSは他局やネットニュースより早く、同日午後8時54分のニュースで「社員が逮捕されたことは誠に遺憾であり、ご本人やご家族をはじめ関係者の方に深くお詫びいたします」と謝罪した。TBS関係者が“スクープ”の内幕を語る。

「静岡県警の公式発表前に、系列の静岡放送の記者が逮捕の情報をつかみ、その連絡をもとにTBS上層部で対応を協議した。社の危機管理上、先に報じて謝罪した方がいいという判断です」

 メディア関係者が逮捕された場合、警察当局が事前に容疑者の所属するメディアの記者に“耳打ち”して知らせることは珍しくない。

 今回とはケースが違うが、財務省の前次官のテレビ朝日女性記者に対するセクハラ問題では、テレ朝側が事前に記者から相談を受けていたにもかかわらず、黙殺して週刊誌に報じられたことで大きな批判を浴びた。

 TBSとしては、他社に報じられて謝罪会見を開かざるを得なくなる前に報じた方が傷口が小さく済むと考えたようにも映る。だが、TBS広報部は“自社スクープ”を否定する。

「事前に逮捕情報を得ていたというのは事実と全く異なる。警察の広報発表があったのが当社のJNNフラッシュニュースの少し前で、たまたまニュース枠があったから第一報になった。ニュースの原稿でも、『警察によりますと』と発表記事であることを伝えています」

 と強調した。だが、TBSは社員逮捕後、正式な会見は開いておらず、その後の報道番組では一切報じていない。エリート社員の中1少女連れ回しという大不祥事は、「ニュースで謝罪」が済んだという判断なのか。

※週刊ポスト2018年9月21・28日号

9/10(月) 7:00配信 NEWS ポストセブン
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