右足でのシュートか、左足でのシュートか――両方のFKのキッカーがチームにいることが有利に働いたか。
83分、札幌が直接FKのチャンスを得る。場所はペナルティアークの中央。絶好の位置だ。ボールの近くには、
“両利き”のチャナティップと、レフティの福森晃斗が立つ。
 
蹴る直前、ふたりはこんな会話をしていたという。
 
「チャナ(ティップ)がもらったファウルだったので、『俺が蹴る』みたいに言ってきたんです。
 でも、自分にもプライドがあるし、FKは自分のものだと思っていて、『自分が蹴る』と。
 そうしたら、チャナは笑顔を見せながら、いいよ、という感じで譲ってくれたんです」
 
このやり取りの雰囲気が、少なからず神戸側に迷いを生じさせたのかもしれないし、
冒頭で記したとおり、利き足の異なるふたりの存在が影響したのかもしれない。
いずれにしても、「自分に合わせたのか、チャナに合わせたのか、壁の位置(の狙い)がちょっと分からなかった」(福森)。
その結果、「自分の目の前にコースが空いていた」(福森)。
 
そして、この瞬間、福森の脳裏に、ある出来事が蘇る。
 
「(7月の16節)川崎戦のFKの場面でも、プレー再開の笛が鳴った時に、(川崎のGK)チョン・ソンリョン選手がポストの近くに立っていたことがあって、
それを(小野)伸二さんは分かっていて、(蹴ってもいいと)声をかけてもらったことがあった。

そのことを意識して今回もGKを見ていたら、似たような感じで、笛が鳴った時、キム・スンギュ選手がポストの近くで壁に指示を出していた。だから、冷静に蹴れました」

【札幌 3-1 神戸 PHOTO】札幌がホームで快勝!神戸を寄せ付けず!

【札幌】「笛も鳴ったし、蹴っちゃえ」相手の隙を突く福森晃斗の絶妙FK弾の舞台裏
自身の今季2点目に加え、狙いすましたクロスで都倉のゴールをお膳立て。1得点・1アシストの活躍で3連勝の立役者に。
観察眼と高い技術が凝縮されたファインゴール
集中を高める福森の“気配”を、神戸の壁の端に立っていた宮澤裕樹は感じ取っていた。
 
「こっち(シュートコース)がガラ空きなのは分かっていて、GKが壁を作っている最中で、福森も“笛が鳴ったら蹴ろう”という感じだった」
 
壁の作り方が曖昧だと思った。シュートコースもよく見える。プレー再開の笛が鳴った時、相手のGKはまだポストの近くにいる――
 迷いなく自慢の左足を振り抜くと、低い弾道のシュートはワンバウンドしてゴールネットを揺さぶった。
 
「笛も鳴ったし、蹴っちゃえと思って」
 
こともなげに福森は言うが、過去の経験を活かして冷静に状況を把握する観察眼と、相手にさとられないようにと、
ほぼノーモーションにもかかわらず、正確にコースを射抜く高いキックの技術が凝縮されたファインゴールだった。


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