昭和の「ウルトラマンシリーズ」で異彩を放つのが「ウルトラマンレオ」(昭和49年)。
放送から45周年を前に、平成シリーズの監督が新作を撮りたいと発言するなど、再評価の声が上がり始めている。(中略)

異色の作品だった。M78星雲出身のウルトラ兄弟たちとは出自が異なる。全体に格闘色が強く、スポ根ものに通ずる特訓シーンが続いた。
「帰ってきたウルトラマン」(46年)から毎年新作が放送された「昭和第2期ウルトラマンシリーズ」の4作目だが視聴率はふるわず、
結果的に「レオ」をもってシリーズの放送はいったん終了した。

「今なら、あんな撮影はできないよね」
口をそろえて撮影当時を振り返るのは、おゝとりゲンを演じた俳優、真夏(まなつ)竜(68)と、モロボシ・ダン役の俳優、森次晃嗣(75)だ。

2人が思い出しているのは、ダン隊長が特訓のためゲンをジープで追い回した場面。
「撮影で使ったのが中古のジープだったからブレーキが甘かった。急ブレーキをかけても6メートルは進んでしまう。
実際に私の脚にバンパーが当たっていた」と真夏は恐怖を振り返る。

「つまずいて転んだりしたらひかれちゃうわけだから、新人だったけど、監督に抗議したよ」
監督は「うん分かった。はい、本番!」と一顧だにしない。鬼気迫る真夏の表情が放送されたが、「あれは芝居じゃない。本気で目が血走っていた」と苦笑する。

「当時、芝居に関しては素人みたいなもんでしたから、かなり迷惑をかけたと思うけど、それも覚えていないほどですね」
真夏は、デビューしたて。森次は、「ウルトラセブン」を経て映画やドラマで活躍していた。
森次は「迷惑なんてことはなかったよ。最初は、色が浅黒いし、当時はやっていた(カンフー俳優の)ブルース・リーに似て精悍(せいかん)
な雰囲気があった。『こういうウルトラマンがいてもいいな』と思った」という。

厳しい特訓の場面が続いたドラマだったが、森次が「どうもお先〜。ゲン〜、頑張ってな〜」と声をかけるなど、
2人の関係は朗らかでほのぼのとしたムードに包まれていたという。

放送当時、視聴率に苦戦したレオだが、近年人気が再燃している。
ドラマ「ウルトラマンメビウス」(平成18年)や映画「大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE」にゲスト出演。
放送時は特訓を受ける側だったレオが、新世代のウルトラマンの師匠の立場で登場した。

森次は、「『レオ』には、今の時代にはないような師弟愛があった。今、厳しく叱る、叱られることへの憧れがあるんじゃないかな。
そういう部分に現代は物足りなさがあるのかもしれない」とレオ人気再燃の理由を分析する。

真夏は「今と放送当時の社会情勢が似ている」と指摘する。「得体の知れない不安があったり、異常気象だったりするでしょう」

平成ウルトラマンシリーズを手がける坂本浩一監督は、「僕の一番の願いは、新作のレオを作ること」と明かした。
8月16日に東京都内で開かれたイベント「ウルトラマンフェスティバル」で語った。
真夏は「デビュー当時の作品に目を輝かせてもらえる役者っていないよね」と相好を崩す。
「ファンの愛を裏切らないでいることが大切」。これからも、ゲンとしての思いを持ち続けていくと誓う。

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