希望の光が見えかけていた中、まさに青天の霹靂(へきれき)。アジア大会のバスケットボール男子代表から4選手が追放された。

 騒動後初戦となった1次リーグ香港戦後、“ミスターバスケット”佐古賢一コーチは「われわれも確かな情報が来たのは本当に急だった。誰もが、これからどうなるのかなという不安の日々が過ぎた」と振り返った。そして「(東京五輪への)影響はかなりあるとわれわれは思っている。バスケットがこういう形で起こしてしまったことに対しての風当たりも強くなる」と重く受け止めた。

 さかのぼれば男子代表は、かなり以前から東京五輪出場に黄信号がともっていた。一国1つのトップリーグであるべきと言うFIBA(国際バスケットボール連盟)の方針に反し、日本にはNBLとbjリーグが混在。2014年に「資格停止処分」を受け、国際試合の出場が禁止された。ここから川淵三郎氏を中心に統一のトップリーグ(現Bリーグ)の設立へと動きだし、急ピッチで強化を進めてきたのだ。

 世界ランク49位の男子代表はもともと、開催国枠を確約されておらず、W杯16強程度の実力を示す必要があるとされている。W杯アジア1次予選を突破した日本は、ここから2次予選を勝ち抜き、W杯出場権を得る必要がある。

 7月まで行われた1次予選突破の“救世主”となった八村塁(米ゴンザガ大)は、大学との交渉がかなっての“悲願”の招集。日本国籍を取得したファジーカス(川崎)の加入で高さが増し、NBA選手を擁するオーストラリアを破るなど、追い風は吹いていた。9月から始まる2次予選の八村の再招集は未定だが、是が非でもそこを勝ち抜かなければならない。

 代表チームの底上げを目指し、若手中心で参加した今回のアジア大会。協会側は当初はその結果もFIBAへのアピール材料になるとさえ思っていた。しかし若い選手らを中心に起きた愚行。「いつもの試合に臨むのとは全く違う感じだった」と主将のPG辻(川崎)が言うように、精神的にも体力的にも、残る8選手の負担は大きくなっている。日の丸を背負って戦っている以上、他人ごとで済ませてはいけないとは思うが、五輪の開催国枠獲得という大きな“責務”を背負って戦ってきた中心選手たちの思いを想像すると、心が痛む。

 「現場はなんとしてでも1つでもいい成績を残して、アピールするしかない」と佐古コーチ。アジア大会代表を率いるエルマンコーチは「この8人とスタッフで戦い抜いてみせる」と誓った。

 軽はずみな行動が、多くの人が積み重ねてきたものを一瞬にして壊す。スポーツ界で続く不祥事。同じ轍(てつ)を踏むことは、もう許されない。(デイリースポーツ・國島紗希)

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