大旋風の舞台裏で、大人たちが奔走している。

白いマウスピースがトレードマークのエース吉田輝星を中心に、予選から9人だけで戦ってきた県立の農業高校が甲子園100回大会で大暴れ。14日の大垣日大(岐阜)戦では秋田県の視聴率が驚異の45.5%をマーク(ビデオリサーチ調べ)すれば、スポーツ紙もこの“金農旋風”を1面でデカデカと掲載。数あるスポーツイベントの中で今夏一番の盛り上がりを見せている。

 その一方で、地元からは、うれしい悲鳴が聞こえてきた。

「ここまで勝ち進むとは予想していませんでした。一生懸命頑張ってくれて、非常に大きな反響をいただいて、本当にありがたいことです」

 こう話すのは、金足農の運動部全体の後援会会長で、「金農甲子園出場支援協議会会長」を務める佐々木吉秋氏だ。

■1口2000円の追加募集

 この「協議会」は、同窓会、父母会、野球部OB会、後援会などが一堂に会し、甲子園出場のための賛助金(寄付金)を集めているのだが、去る17日にはOB会のホームページ上に、

「勝ち進むことで、控え選手や吹奏楽の応援団の宿泊費用が必要となり当初の寄付金の予算を大幅に超える可能性が出てきてしまいました。皆様のご協力をどうぞ宜しくお願い致します」と、賛助金の追加支援をお願いする案内を掲示した。

 1口2000円で、銀行やJAバンクが振込先となっており、これを後押しするように地元紙にも掲載された。前出の佐々木会長が言う。

「当初、賛助金の目標を5000万円に設定しました。11年前に出場した際も同じ目標を立て、同程度の金額が集まりました。ただ、今回はもうひと頑張りしないといけない、というのが正直なところです」

 ひとたび甲子園に出ると、仮に1回戦で敗退したとしても、3000万〜4000万円程度のカネが必要といわれ、その大半は寄付金で賄うのが通例となっている。

 金足農もご多分に漏れず、佐々木会長が所属する同窓会をはじめ、学校の校長、教頭、教員も含めた多くの関係者が、昼夜問わず、寄付金集めに駆けずり回った。

 甲子園出場が決まった時点でまず、金足農の卒業生1万5000人に寄付金を募る案内状を送付した。地元企業はもちろん、農業高校ということもあり、農家、卒業生が多く勤めるJA、各地に点在する道の駅、さらに秋田市を中心に商店街、町内会などを回り、ビラ配りまでやったそうだ。

■バス代だけで1500万円

 100万円単位で寄付をしてくれた企業も中にはあるが、基本的には一個人につき5000〜1万円。とにかく数を集める必要があるものの、「近年は県内の農業従事者が減少傾向にあることも寄付金集めに影響しているのではないか」とは、地元関係者。当初、集まったのはどうやら目標を1000万円ほど下回る4000万円程度だったらしい。

 さる金足農野球部OBは「支出が当初の想定を超えている実情があります」と、こう続ける。

「監督やベンチ入り選手の交通費、宿泊費は主催者が負担してくれますが、生徒や吹奏楽の応援団の費用は寄付金で賄わないといけない。たとえば初戦はバス13台で生徒、教員ら400人以上が、片道13時間をかけて応援に駆け付け、試合が終わるとそのまま日帰りで帰省した。その移動費だけで、1500万円程度必要でした。11年前は約700万円だったバス代がここ10年、貸し切りツアーバスの事故が多発して法例が改正され、料金が高騰したことが影響しています」

 ただでさえ悲鳴を上げているところにもってきて、想定外の快進撃だ。

 17日の横浜との3回戦以降、応援団の宿泊代は数社の旅行会社を入札方式で選定し、極力抑えたという。しかも、一部を生徒が負担する形にしたが、それでも費用はバカにならない。現在、現地には約250人が滞在していて、生徒1人につき1泊当たり5000円とすると、準決勝の20日までの3泊分の宿泊代だけで375万円に上る。高校野球に詳しいスポーツライターの田尻賢誉氏が言う。

「その他、応援団はメガホンや帽子などのグッズなど、用具代もかかります。寄付金集めに関しては、04、05年と夏を連覇した駒大苫小牧がブラスバンドの応援団を派遣するために、経営母体の駒沢大学に借金をして飛行機を用意したことがあった。ただ、私立だからできることで、公立の学校は借金はできません」

 さる学校関係者によると、「追加募集した17日時点で3000口程度(約600万円)の反応があった」という。この週末でどれだけ集まったのかは近日中に判明する。大フィーバーの裏側で、その台所はテンヤワンヤになっている。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180820-00000015-nkgendai-base