【東スポ2020現場最前線(14)】情熱を持った者よ、集まれ――。東京五輪はいよいよ2年後の7月24日に開幕する(パラリンピックは8月25日)。今大会の肝の一つは、海外からの選手、関係者、観光客を国民一人ひとりが“オールジャパン”でお・も・て・な・しするところにある。極論すれば、大会の成否はボランティアにかかっていると言ってもいいだろう。ボランティア募集に関しては、一部で「やりがい搾取だ!」「ブラック五輪」などと“炎上”する一幕もあった。そこで今回は五輪ボランティアの実態を取り上げる。

 ボランティアには、大会運営に直接携わる「大会ボランティア」(組織委員会が募集)と、国内外の旅行者に対する観光・交通案内等を行う「都市ボランティア」(東京都はじめ自治体が募集)に大別される。それぞれ、8万人と3万人の計11万人を募集。過去大会と比べても大規模なものになる。

 大会組織委員会の坂上優介副事務総長は「ロンドン大会の成功の要因の一つはボランティアの活躍にありました。東京大会でも情熱を持って一緒に盛り上げていただきたいですね」と語った。

 大会ボランティアの応募資格は(1)2002年4月1日以前に生まれた人(2)活動期間中、日本国籍または日本滞在の在留資格を有する人といたってシンプル。語学力が必ず求められるわけではなく、18歳以上であれば上限なしで誰でも応募することが可能なのだ(応募は公式ウェブサイトで9月中旬〜12月上旬)。活動期間は10日以上。1日の活動時間は各セクションによって異なるが、休憩・待機時間を含み8時間程度だ。飲食、ユニホーム、会場までの交通費が支給される(宿泊費は自己負担)。

 3月に公表された募集要項案では交通費も自己負担で、活動時間等に注意書きも少なく「ブラックすぎる」「やりがい搾取だ」などと猛批判を浴びた。もともと過去大会に準じたもので東京大会が特別厳しいわけではなかったが、組織委員会は、有識者で構成するボランティア検討委員会でさらなる論議を重ねた。

「交通費は支給することになり、活動時間も8時間きっかりではなく、休憩時間が含まれることを明記しました。実働はもっと少ない。10日以上の活動期間は長いという意見もありましたが、チームワークを醸成するためにそのぐらいの時間は必要という意見もあり、このような形になりました」と同副事務総長は明かす。

 ボランティア検討委員会のメンバーで、東京マラソン財団ボランティアセンター長を務める山本悦子氏はこう指摘する。

「募集要項案については『強い表現は使わない方が良い』と申し上げました。読む人によっては強制的に感じてしまいますから。気持ちよく参加してもらうためには配慮が必要です」

 こうして今回の募集要項が出来上がったというわけだ。そもそもボランティアは金銭を介在した労働力の提供ではない。ミッションに賛同し、自分の時間とスキルを提供してでも参加したい人が手を挙げるもの。そのため「やりがい搾取」や「ブラック」といった批判はまったくのナンセンス。実際、東京マラソンは毎年1万人のボランティアが無償で参加するが、抽選で参加者を決定しており、落選者が出るほど応募が殺到するという。そこには決してお金では買うことのできない人々の一体感と感動があるからだ。

「例えば、荷物を預かるボランティアの活動は午前6時半に始まって同8時半には終わります。それでもランナーを見送り終わったときに泣いているボランティアもいる。まだランナーはスタートしていないんですけどね(笑い)。つまり、それだけ東京が一つになることに少しでも携われた喜びがある。もしそれが五輪・パラだったらより大きなものになるに違いありません」(同氏)

 中には「本当に11万人も集まるのか?」という疑問の声もあるが、組織委員会は連携する全国の大学約800校に学生ボランティアを呼びかける方針だ。さらに外国人も参加するので、非現実的な数字ではないだろう。

 ちなみに、山本氏にボランティアにふさわしい人を聞くと「やってみたいと思えばOK」とのこと。ハードルは低い。

 次にいつ東京大会が行われるかはわからない。またとないチャンスにプライスレスな価値を体感してみてはいかがだろうか。

>>2以降に続きます

2018年07月25日 11時00分
https://www.tokyo-sports.co.jp/sports/othersports/1073191/