■IOCが認定基準緩和

 2020年の東京で、性別変更をした選手が初めて五輪に出場する可能性が広がっている。国際オリンピック委員会(IOC)が性的指向による差別を禁じ、競技者の性別認定基準を緩和した。しかし、日本国内の対応は進んでおらず、情報も不足している。

【写真】自らの体験を話すベアデンさん=米コロラド州コロラドスプリングス、忠鉢信一撮影


 米コロラド州コロラドスプリングスに住むジリアン・ベアデンさん(38)は東京五輪の自転車女子ロードで米国代表を目指す。「またレースに出られるとは思ってもいなかった。五輪出場は子どもの頃からの夢。あきらめない」

 12年まで男子で活躍した。プロ契約の話もあった。だが、性自認は女性。「うそをついて生きる自分」がいた。競技への意欲が消え、自殺も考えた。だが、妻と2人の幼い子どもがいる。14年、女性になることを決めた。妻は決断を受け入れてくれた。

 ホルモン治療を始め、健康のために自転車の練習を再開した。IOCが性別変更した選手の五輪出場条件を緩和したというニュースを見た時は、ジムで練習中だった。手術から2年という条件がなくなった。「トレッドミルから転げ落ちそうになるくらい驚いた」

 ベアデンさんはすぐに米自転車協会に電話で相談した。16年、レースに復帰。17年、性別変更した女性として初めてプロのレースに出場。2勝を挙げた。来年のパンアメリカン大会に出て、東京五輪への足がかりにする計画だ。

 米自転車協会は、ベアデンさんの例をもとに17年、IOCより寛容な独自のルールを定めた。同協会のレース出場資格6クラスのうち、下位3クラスの性別は、免許証など公的な資料を基にした自己申告制だ。性別を変えた選手は2桁を超えた。チャック・ホッジ技術委員長は「自転車競技を広めることが我々の方針」と話した。


■専門家「情報発信が必要」

 IOCの方針に従って性別認定基準を緩める動きは競技団体に広がっている。陸上とテニスの国際団体は性別変更の規約を設けた。米国では自転車、バレーボール、トライアスロンなどが、英国ではサッカーやラグビー(15人制)が、ルールを明文化している。

 その一方、女性へ性別を変えた選手は、生まれながらの女性と比べて体力的に優位で、互いが一緒に競技するのは不公平だという批判は根強い。


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