その点、日本は試合巧者だったとはいえない。

実は、カウンターをストップする機会は他にもあった。ボールをキャッチしたGKクルトワの前を即座に遮って、スローを妨害できていたら。あるいは、前がかりになりすぎず、スローを受けたケビン・デ・ブルイネの前に誰かが立てていたら。駆け引きの部分で、イノセントだった。

そのしたたかさは、ヨーロッパでしか獲得できない。

数的優位で戦ったコロンビア戦以外は勝ち切った試合がないように、90分間のマネジメントには波があった。2−2のセネガル戦は立ち上がりにスイッチを入れられず、相手ペースのまま失点。2−3のベルギー戦も2点をとった後、ピッチに立つ選手たちは浮き足立つところがあった。

また、選手層の薄さも露呈した。ベルギーは3枚の交代カードを切って、状況を好転させている。一方の日本は2枚しかカードを切れず、しかもこの日は空回りだった。

ロシアW杯で結果を残した大迫勇也、乾貴士、原口元気、香川真司、柴崎岳、酒井宏樹、昌子源、吉田麻也という主力は、今後もベースになるだろう。各ポジションにバックアッパーは出てきているが、どこまで迫れるか。若手の台頭がなければ、戦力的に足りない。来年1月のアジアカップまでに、今回のメンバーの半分近くは入れ替わっていることが理想だ。

懸案は長谷部誠の後継者だろう。

周りを補完して、生かすクレバーさは、長谷部の専売特許といえる。ポーランド戦、終盤にピッチに入っただけで、猛火のようだった相手の攻撃を鎮火した。正しいポジションを取るだけで、周りが無理なくプレーできる。最高のバランサーだ。

現時点では、三竿健斗、橋本拳人が後継者として有力に映るが、欧州移籍して主力になることが条件になるか。大島や井手口陽介を推す声もあるが、長谷部に近いのは三竿、橋本の方だろう。大島は柴崎とキャラクターが近く、井手口は山口蛍に近い。

西野朗監督が退任し、これから誰が日本代表の監督になるかで、スタイルや戦い方は明確になってくる。しかし、誰になったとしても、選手個人の戦う力が下がってしまったら、今回以上の成績は望めない。

「日本らしさ」

それを今回のロシアW杯で示したことは、この先の大きな糧になるはずだ。