【藤田俊哉の目】日本のMVPは乾! 真の強豪国入りを果たすために個のチャレンジを継続すべし
7/4(水) 20:04配信 SOCCER DIGEST Web
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ベルギー戦では見事な追加点をゲット。開幕前の親善試合も含め、乾はここぞで効果的な一発を決めてきた。写真:JMPA代表撮影(滝川敏之)
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■2点を奪ってからどう戦うべきか。W杯で勝ち切る難しさを痛感

まさに死力を尽くした90分だった。

決勝トーナメント1回戦で、日本はベルギー相手に後半途中まで2点のリードを奪ってみせた。最終的に圧力に屈する形で逆転負けを喫し、初のベスト8入りを逃したものの、西野監督率いる日本は、いまの“ベスト”を尽くして、日本のファンに素晴らしい試合を届けてくれた。

ロシアの宿泊ホテルで、私はメキシコ・サポーターの一団と一緒になった。ベスト8進出をかけたブラジル戦を翌日に控えた彼らのボルテージは最高潮に達していた。別のフロアにいたにもかかわらず、彼らの歌声は朝まで聞こえた。
しかしブラジルに負けた翌日のホテルはいつもどおりの静けさを取り戻した。ワールドカップ常連国であるメキシコだって28年間ベスト8の壁を打ち破れないでいる。それほどハードルが高いものなのだ。

そんなベスト8入りの夢に向かって、日本はベルギーとの一戦で素晴らしい戦いを見せてくれた。戦前、0対0で前半を折り返せば勝機が見えてくる、と読んでいたが、まさに理想的な展開となった。
日本は粘り強い守備でベルギーの攻撃に耐えて無失点で前半45分を終えると、後半、一瞬の隙を突いて原口、乾のスーパーゴールで2点のリードを奪うことに成功した。

こんな展開を誰が予想できただろうか。オッズメーカーの予想でも、ベルギーの勝利オッズが約1.4倍に対し、日本が勝つ確率は9.6倍ほどついていたという。10回に1度勝てるか、勝てないかの相手。そんなベルギーから先制点を奪ったばかりか、追加点ももぎ取ってみせたのである。

この時点で時計の針は52分。残り時間、日本はこのまま逃げ切ることができれば、夢のベスト8にたどり着けたのだが、サッカーの神様はこの日、日本に微笑んでくれなかった。

2対0になってから、追いかけるベルギーは高さのあるフェライニ、スピードのあるシャドリを投入。2枚のカードを切って圧力をかけてきた。
対して日本は本田、山口というカードを切って3点目を狙いにいった。“本気”になったベルギーの猛攻を凌ぐだけの術と余力が、残念ながら日本には残されていなかった。

2点を奪ってからどう戦うべきか、ワールドカップで勝ち切る難しさを痛感した。限られたテストマッチを消化しつつ、わずか2か月ほどの期間でチーム作りを急ピッチで進めてきた日本は、とりわけ、試合の進め方という点において、チームとしての引き出し(オプション)は充分ではなかったかもしれない。
チームとして積み重ねてきた経験とともに、“個”の力の差が最後に出てしまったと言える。

(中略)

ブラジル対メキシコでも交代選手によって勝負は決した。強豪国には、ビッグクラブに所属している選手がベンチにいる。
極論を言えば、23人の誰が出ても変わらない戦力を保持しているのが強豪国であると言える。そんな強豪国だって、歯車がひとつでも狂えば、今大会のドイツのようにグループリーグで敗退してしまう。
チームの総合力が問われるのが、ワールドカップという舞台なのだ。

(中略)

■4年後、またメキシコのようにベスト8の壁に挑み続けていくしかない

今後、日本が真の強豪国の仲間入りを果たすには、これからも“個”のチャレンジを続けていくことが必要だ。今大会の日本のMVPを挙げるとすれば乾だろうが、その乾をはじめ、柴崎、大迫、原口と結果を残したのは、海外組の面々だ。

Jリーグでも昌子のような素晴らしい選手が育っている。本田、川島、長友、吉田、香川といった素晴らしい選手たちも、最初から光り輝くダイヤモンドだったわけではない。
海外に出て世界の厳しさを知って成長してきた。そして原石が磨かれて本当のダイヤとなったのだ。

選手の成長にも、チームの成長にも、マジックなんてない。チームとして個人として、世界と戦い続けていろんな刺激を受けて成長し、そして4年後、また再びメキシコのようにベスト8への壁に挑み続けていくしかない。