6月はなんと言ってもサッカー・ワールドカップロシア大会であった。

 しかもスポーツ新聞的にも大事件が起きた。そう、日本対ポーランド戦の後半約10分の日本の時間稼ぎ、ボール回しである。

 あのプレーをどう見たか。スポーツ新聞はやはり読みごたえがあった。

 スポーツ報知は、

 「観客大ブーイング W杯史に残る『ボルゴグラードの恥』なのか? 負けていても他力でもボール回し」

 と題し、ロシアW杯取材記者5人がそれぞれの観点で「賛成、反対」を論じた。これが見開き2ページで、まさにワールドカップ級の企画! 

 賛成派の記者は、

 「周り気にしない鈍感力で負け逃げ遂行」

 「まだ弱小国の日本が泥水をすすってでも決勝Tに進むために見せた覚悟に、熱いものを感じずにはいられない」

 「(集客でライト層をどう取り入れるかを考えた場合)この結果は少なからずJリーグの発展、活性化にもつながる」

 反対派の記者は、

 「そこまで勝ち上がることにこだわっていたならば、なぜ先発を6人も入れ替えたのか。(略)相手は格上のポーランド。この条件で引き分け以上の結果を得られると判断したのならば、甘い」

 「ポーランド戦の終盤、日本代表が取った時間稼ぎは子供たちにどう映ったのだろうか。警告を恐れ、失敗を恐れていた」

 まさにカンカンガクガク。

 日刊スポーツもサッカー面は「突破14ページ大検証」と6月30日に報道。あの時間稼ぎについてはやはり意見は分かれた。
「フェアプレーポイントで決めるのがナンセンス」

 W杯キャップは、

 「西野監督が会見で漏らした複雑な思い、選手への気遣い。(現地で)見て聞いたから思う。批判もあるだろうが、これは『あり』だと。決勝トーナメントには進んだ。最優先するべきはそこ。潔く散るより、不格好でも批判されようとも、次に進んだ方がいい」

 しかし別の記者は、

 「『自力』を放棄し『他力』に頼った。目の前の相手に勝つために全力を尽くすのがフェアプレーならば、アンフェアだ。(略)この日の試合が世界から称賛されることはない。」

 と書いた。

 セルジオ越後氏は「フェアプレーポイントで決めるのがナンセンス」からの「何よりベルギーに勝たなければ、日本の評価はさらに下がる」とマイペースでいろんな方面を突き放す。


「何かが、大きな何かが変わりそうな気がする」

 スポーツニッポンに掲載されている金子達仁氏(スポーツライター)のコラムも「流れ」で読むと面白かった。

 セネガル戦を終えてのタイトルは、

 「日本代表と日本が結びつく初めての好機がやってきた」

 《18年6月24日の日本は勤勉だった。まだまだ改善の余地が多々あるとはいえ、セネガルよりは緻密だった。苦境に立たされても逆上することなく、悪質な反則や見苦しい行為は皆無だった。何があっても諦めなかった。(略)

 このスタイルを貫いていけば、そのうえでポーランドを倒すことができれば……何かが、大きな何かが変わりそうな気がする》

 いまも日本を弱小国としか見ない人は多いが、このサッカーを続けていけば《美しい独自の伝統文化を思い浮かべる人が出てくる。大災害に見舞われても秩序を失わなかった国民性に思いを馳せる人が出てくる》

 結びは、

 《ポーランド戦が、いよいよ重要になってくる。たとえこの試合で東欧の古豪に最後の一太刀を浴びることになろうとも、今大会で日本がなし遂げたことが消えるわけではない。だが、勝てば、日本代表と日本が結びつく。これは、史上初めてやってきた好機である》

 そして、あのポーランド戦である。
金子「取り戻せ。誇り、名誉」

 見出しは「W杯史上2番目にひどい試合。日本の醜悪な試合」ときて「だからこそ激しく飢えろ、取り戻せ。誇り、名誉、未来のために――封印した牙で、赤い悪魔を食いちぎれ」と。

 セネガル戦で日本の「見苦しい行為は皆無だった」と書いた金子達仁氏からすれば当然の流れか。これもスポーツ紙を追う面白さだ。

 ※ちなみにW杯史上最悪の試合とは金子氏曰く80分間時間稼ぎをした西ドイツとオーストリアの試合(1982年)であり、「赤い悪魔」とはベルギーの異名である。