西野朗監督率いる日本代表が、2010年南アフリカ大会以来となる決勝トーナメント進出を決めた。グループリーグ最終戦のポーランド戦前、こんな勝ち上がり条件をよく耳にしなかっただろうか。

 「引き分けでもOK」

 聞こえだけなら簡単そうだ。しかしポーランド戦の日本を思い出せば、そのタスクは難しいものだと痛感した人は数多いだろう。

 では実際、W杯で引き分けってどのくらい起こるものなのか? 

 今大会は全体で見ても引き分けは少ない気がするし、スコアレスドローが1試合しかなかった。そもそも今大会最初の引き分けが「スペイン3-3ポルトガル」の壮絶な撃ち合いだったのが、この傾向を暗示していたのかもしれない。

 そこで、現行の32カ国制になったフランス大会からロシア大会まで、引き分けに終わった試合についてチェックした。

 決勝トーナメントはPK戦(記録上は引き分け扱い)で決着をつけるので、各大会グループリーグ48試合のうち何試合が引き分けだったかを調べた。そして、独断と偏見で印象的な引き分け試合、チームを抽出している。
3引き分けのチームが2カ国も。

 <1998年フランス大会:16試合/48試合、スコアレス3試合>
(代表的な引き分け)
イタリア2-2チリ、チリ1-1オーストリア、チリ1-1カメルーン、オランダ0-0ベルギー、ベルギー2-2メキシコ、ベルギー1-1韓国

 グループリーグ全試合のうち、3分の1が引き分けだった。日本が初出場だったので、そっちに意識がいって気づかなかったのかもしれないが……。チリとベルギーはどちらも3引き分け。チリは当時南米最強と言われたサラス&サモラーノの決定力を前面に、初戦のイタリア戦で撃ち合いを演じるなど、グループステージを2位突破した。

 その一方でベルギーは、オールドスタイルの司令塔として知られたシーフォ、4年後に日本が対戦したヴィルモッツらを擁したが敗退。明暗がくっきり分かれているが、引き分けがプラスなのかマイナスなのかは微妙なところだ。


日本にとっての初勝ち点はドロー。

 <2002年日韓大会:14試合/48試合、スコアレス2試合>
(代表的な引き分け)
日本2-2ベルギー

 自国開催のW杯、やはり一番記憶に残っている引き分けとして、この試合を選ばないわけにはいかないだろう。日本がワールドカップで手に入れた初めての勝ち点が、ベルギーとの引き分けによる勝ち点1だった。

 日本サッカー史に残るこの歴史的ドローの試合展開を思い出してみると、ベルギーに先制ゴールを奪われ、鈴木隆行の魂のゴールで1-1に。その後、稲本潤一の豪快なシュートで日本中が歓喜した。2-2のスコアはロシアW杯のセネガル戦と一緒。こういう試合ができるときの日本は決勝トーナメントに勝ち上がれる、のだろうか。
スウェーデンがしぶとい戦いぶり。

 <2006年ドイツ大会:11試合/48試合、スコアレス5試合>
(代表的な引き分け)
トリニダード・トバゴ0-0スウェーデン、スウェーデン2-2イングランド、クロアチア0-0日本

 引き分けの約半分がスコアレスという、なんとも渋い大会だった。そして日韓大会に続いてスウェーデンが2引き分け。長身DFが並んだ手堅いディフェンスから、前線の決定力で強豪を苦しめ、相手に勝ち点を与えなかったのは、なんともスウェーデンっぽい。ちなみにロシア大会では2勝1敗で首位通過。やはり取れるなら、勝ち点3は大きいのだ。

 そしてこの大会の日本は、2戦目でクロアチアと引き分けていた。初戦でオーストラリアに逆転負けを喫していたので、最終戦でブラジル相手に勝利するしかない状況に。日韓大会とは対照的にドローに泣いた。
ポルトガルとロナウドも意外と苦しむ。

 <2010年南アフリカ大会:14試合/48試合、スコアレス6試合>
(代表的な引き分け)
ニュージーランド1-1スロバキア、イタリア1-1ニュージーランド、パラグアイ0-0ニュージーランド、コートジボワール0-0ポルトガル、ポルトガル0-0ブラジル

 ニュージーランドは3引き分けで3位。28年ぶりの出場で勝てなかったとはいえ、イタリア相手に互角に渡り合って世界を驚かせた。

 ちなみにポルトガルは当時、ロナウドがレアル・マドリーに移籍して点取り屋としての才能を発揮し始めた頃だが、2度のスコアレスドロー。この頃のロナウドは、代表ではそこまで輝けていなかった。

 彼が代表で点を取ってチームを栄光に導くようになるのは、2016年のEURO(欧州選手権)優勝まで待つことに。ただこのEUROのグループリーグでは、3引き分けで3位通過だったのだから勝負はわからない。