ロシアW杯は、いよいよ30日から決勝トーナメントが始まる。戦前は苦戦が伝えられていた日本代表も、グループHで2位となり、2大会ぶりのベスト16進出を決めた。世界最大のスポーツイベントであるサッカーのW杯。総額4億円が賞金に計上されている今回のロシア大会では、優勝国にいくら分配されるのか。決勝トーナメントが始まる前に、チェックしておこう。(文=池田敏明)
優勝賞金は前回大会から300万ドル増額

近年のワールドカップは、様々な利権が絡み、巨額のカネが動くビッグイベントとなっている。一方で、選手たちは国の威信をかけ、目の前の勝利、あるいは世界王者の称号を目指して死力を尽くす。敗退が決まって泣きじゃくる選手、茫然自失となる選手の姿からは、大会にかける思いの強さが伝わってくる。

選手たちはカネのために戦っているわけではないが、W杯でも他の大会と同様、賞金が用意されている。FIFAの発表によると、今回のロシア大会では総額4億ドル(約438億円)が賞金として計上されている。ちなみに、2014年ブラジルW杯の賞金総額は3億5800万ドル(約393億5363万円)だったので、40億円以上増額されたことになる(以下、「増額」はすべてブラジル大会との比較)。賞金はUEFAチャンピオンズリーグ(以下CL)のようなラウンド進出ごとにボーナスが積み上がっていく形式ではなく、順位によってあらかじめ決まっている額が支払われる形。17-18シーズンのCLの賞金総額13億1890万ユーロ(約1691億円)との差が歴然としているのは、この形式の違いによるものと考えられる。

では、順位ごとの賞金額を見ていこう。優勝したチームには3800万ドル(約41億6850万円)が支払われる。あくまで比較だが、2018シーズンのJ1リーグを制したチームは優勝賞金、理想強化分配金、均等分配金合わせて22億円超を受け取る。W杯優勝賞金がその約2倍であることを考えると、「そんなに高額ではないな」という印象を受けるが、“世界王者”の栄誉は何物にも代えがたい。ブラジルW杯の優勝賞金は3500万ドル(約38億3940万円)だったので、300万ドルの増額ということになる。

準優勝チームの賞金は2800万ドル(約30億7794万円)。優勝賞金とは1000万ドルの差がある。こちらもブラジル大会の時に比べて300万ドルの増額だ。3位は2400万ドル(約26億3823万円)、4位は2200万ドル(約24億1837万円)と、こちらは200万ドルアップ。2位から4位までの賞金額は、それほど大きな差はつけられていない印象だ。

日本代表の選手たちに支払われるボーナスは

5位から8位まで、つまり準々決勝で敗れた4チームに対しては、それぞれ1600万ドル(約17億5882万円)が支払われる。9位から16位まで、つまり決勝トーナメント1回戦で敗れたチームは1200万ドル(約13億1911万円)。日本はすでに決勝トーナメント進出を決めているので、この時点で1200万ドルは確保したことになる。

5位から8位までは200万ドル、9位から16位までは300万ドルが増額されている。そしてグループステージ敗退となったチームにも、それぞれ800万ドル(約8億7941万円)が支給される。また、出場する全チームには準備金として150万ドル(約1億6488万円)が与えられる。これらは4年前からお値段据え置きだが、たとえば今大会に初出場したパナマなどは物価が安い国なので、800万ドル+150万ドルは同国のサッカー連盟にとってそれなりに大きな収入となるだろう。一方でまさかのグループステージ敗退となった前回王者ドイツは、3500万ドルから800万ドルへと賞金額が激減。上位の常連だったドイツにとって、今回の敗北は金銭面でも痛手となるだろう。

この賞金というものは、FIFAから各国のサッカー連盟、サッカー協会に対して支払われるものだ。では、選手たちはW杯に出場することで、どの程度の収入を得ることができるのだろうか。日本代表の場合、代表チームでの活動には「日当1万円」が日本サッカー協会(以下JFA)から支給される。ハードワークや何らかの技術・資格が必要なアルバイトと同程度という感覚であり、トップレベルの選手にとっては微々たる金額だと思われるが、代表に招集されること自体が名誉であると考えれば、キリのいい妥当な額と言えなくもない。これは代表に招集されている間は支払われ続けるもので、今回のメンバーたちには直前のトレーニングキャンプから数え、すでに約1カ月分が支払われることになる。今後、勝ち進めば勝ち進んだぶんだけ日当も増えていく。