1勝1分、グループリーグ突破をかけた第3戦の行方は? 対戦相手のポーランドはすでにGL敗退が決まっているとはいえ、欧州予選を8勝1分、わずか1敗で突破した強豪であることに変わりはない。

 引き分け以上でGL突破が決まる日本代表は、どのように戦えばいいのか。ポーランドの内紛が噂され、モチベーションの高い若手を中心にしたチーム編成になるのでは? などさまざまな情報が飛び交う中、日本代表は「事前の準備」の点では難しい選択を迫られることになる。

 圧倒的有利とは言え、決勝トーナメント進出を確定させているわけではない日本代表はポーランドとどう戦えばいいのか。オランダ・アヤックス/オランダ代表のユースカテゴリでアナリストとして活躍し、日本の指導者を対象に「The Soccer Analytics」という分析メソッドの普及に務める白井裕之氏にスカウティングを依頼した。

取材・文:大塚一樹 提供:COACH UNITED
「戦略」を活かして「戦術」で勝て!  ポーランド攻略の鍵は“中盤の人数”

セネガル戦後、サポーターに挨拶する日本代表 [写真]=David Ramos - FIFA/FIFA via Getty Images
■戦略で好結果を残した日本代表、一方で戦術面には改善できる点も

 大会直前の解任騒動から西野朗監督の就任を不安視する声が多い中、着実に結果を残し、1勝1分でグループHの首位に立った日本代表。“望外”とも言える快進撃を続けているが、決勝トーナメント進出をかけた戦いはこれから始まる。

 ここまで2戦続けて実戦用のスカウティングをしてくれた白井氏は、日本代表の戦いぶりを踏まえた上で、「さらに優位に戦いを進め、勝利の確率を上げるための」戦い方を探る。

 ポーランド戦のスカウティングを始める前に、日本代表のここまでの戦いぶりは、どうなのだろう。白井氏にとっての“仮想自チーム”である日本代表の戦いぶりは、自分たちで設定した「戦略」においては試行錯誤、成長の跡が見られるという。

「コロンビア、セネガルと自分たちよりもプレーレベルの高い相手に対してどう戦うのか? という点については、いまの日本代表の選手の特徴や相手の特徴を考慮し、試合前に想定したやり方がうまく機能している面があると思います。最も大きいのは、一律にリトリートするのではなくボールホルダーに対してプレッシャーをかけ続けている点です。この積極性と継続的な守備が強豪相手にある程度能動的に戦えている要因でしょう」

 翻って、相手のやり方を踏まえて試合中に用いる「戦術」については、まだまだ改善の余地があるという。

「相手のやり方を見分けて、それに対応したプレー、さらに踏み込んでそれを利用したプレーができるかどうかの部分ですね」

 日本ではこの「相手のやり方を見分けて即応する」パートを選手の即興性に期待する傾向があるが、ヨーロッパでは戦術部分もあらかじめ設定されている。スカウティングは、相手のやり方のバリエーションを想定して「シナリオ」を作り、その分岐の数だけ対応策を練るという役割を担っている。

 白井氏が指摘したのは、セネガル戦での日本代表のビルドアップのやり方だ。

「セネガルは、初戦のポーランド戦で機能した1−4−4−2ではなく、1−4−3−3、エムベイェ・ニアンの1トップと3人のミッドフィルダーの布陣で日本戦に臨みました。これに対して日本代表は攻撃時のビルドアップで長谷部誠がDFラインまで下がってボールを受けるシーンが目立ちました。これが日本代表のビルドアップを落ち着かせたという分析も目にしましたが、ゲームをコントロールするという観点でいうと、このやり方よりもベターな選択肢があったように思います」

 このセネガル戦でのビルドアップは、ポーランド戦の戦い方にもつながる重要ポイントとのこと。ここからは、白井氏の解説に耳を傾けよう。