ワールドカップ前の最後のテストマッチとなったパラグアイ戦に快勝したことで、日本中がほっと一息ついたのは想像に難くない。これで日本も、ワールドカップで何とか戦えると。閉塞的な状況に一筋の光明が見いだされたのが、パラグアイ戦の勝利であった。

 だが、フィリップ・トルシエは、この勝利は日本にとって何の保証にもならないという。

 その真意はいったいどこにあるのか。

 はたして日本は、ワールドカップ初戦のコロンビア戦に向けて展望が開けたのか……。

 独自の分析を語るトルシエの言葉には常に力がある。ちなみに筆者(田村)は、オーストリア合宿取材とイビチャ・オシム、フィリップ・トルシエとの対話から、西野朗監督が何をめざし、どんな戦いを挑もうとしているかをほぼ理解することができた。もちろん誤解や思いこみもあるだろうが、核心の部分であまり間違っていないと思っている。

 そう難しいことではないので、読者の皆さんもちょっと考えて欲しい。

 西野ジャパンがここまで試合で試したことと、オシム、トルシエの言葉、そして西野朗という人物がこれまでどういう経歴を辿ってきたかを踏まえれば、自然と結論は導き出されるだろう。

 今回のコラムは、トルシエに聞いた最新の日本代表にまつわる対話をお伝えする。
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パラグアイ戦では対戦国のスカウトを欺けたはず。

 ――ワールドカップ準備の最終試合として、昨日のパラグアイ戦をどう見ましたか? 

 「思うに西野監督はリザーブチームを先発させた。彼は選手たちに時間を与えメッセージを発した。つまり出場の機会のあまりない選手、先発では出場していない選手たちに、彼らのことも頼りにしているから、グループの一員としてプレーする機会を彼らにも与えると。

 そして彼はグループを守りたかった。日本の最終戦を視察に来た人たちの目を欺きたかったのだろう。とりわけ対戦相手国のスカウトたちの目を。

 試合には勝ったが、その試合はとてもレベルが低く低調だった。パラグアイはワールドカップに出場しない。選手たちはバカンスに行くよりは試合に出た方が良いという程度だった(笑)」

(※省略)


■トルシエが予想する先発メンバーは?

 ――コロンビア戦は別の戦いになり、西野監督は改めてスタメンを選ばねばならないのですね。

 「彼の頭の中ではスタメンはもう決まっている。私が考えるに守備はGKが川島でDFは長友と槙野、吉田、酒井宏樹。そしてもうひとりが長谷部だ」

 ――3バックということですか? 

 「いや、4バックだ」

 ――長谷部はアンカーか、ふたりのボランチのうちのひとりとしてプレーする? 

 「それがベースで、そこから先はいくつもの選択肢がある。宇佐美や乾、柴崎、原口、本田、香川、大迫らを先発させることができる。恐らく大迫がトップで起用されるだろう」

 ――武藤よりも大迫でしょうか? 

 「そう思う。君は武藤の方がトップとしていいと思うか?」

 ――それもありますが、岡崎のコンディションがもっと上がっていけば……。

 「そうだが、岡崎の状態は決して良くはない。西野監督は別の選手を起用するだろう。ボランチは長谷部と大島かも知れない。乾も可能性はあるが、先発は宇佐美になるように思う。中盤から前は長谷部と大島、宇佐美、本田、原口、トップが大迫だ」
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「彼は本田を心理的な理由から使わざるを得ない」

 ――本田は先発出場ですか? 

 「(少し考えて)答えはウィとノンだ。しかし彼は本田を心理的な理由から使わざるを得ないだろう。特に試合のスタートに関してはそうだ。リスクを冒したくないからこそ本田を起用する。

 何故なら前半は閉じた展開にしたいからだ。ワールドカップのスタートとなる試合で、まずは様子を見る。初戦はいつも特別だ。どのチームもリスクを冒そうとはしない」

 ――特に前半はそうですね。

 「だから本田のような選手を使って(リスクを回避しながら)ボールのキープを試みる。チームに守備の壁を作るには、本田は極めて有効だ。そして後半になったら、乾や武藤、柴崎のような違いを作りだせる選手を投入して勝負をかける。しかし前半は、クラシックな陣形で臨むのではないか」

6/17(日) 7:01
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