確かに“西野イズム”はうかがえた。まずは守備を固めて、ボールを奪い、早い切り替えから攻撃へと転じるサッカーである。守備のプレスをどこでかけ、どうボールを誘い出して、どこで奪うのか、というチームの意思統一は徹底されていたようには見えた。人数をかけて中盤で何度かボールを奪ったし、スペースを埋める連動ができているシーンもあった。
 ガーナ戦の3バックから、一転、ハリルホジッチ前監督時代の4バックに戻して「4−2−3−1」のフォーメーションで臨んだことも正解だった。3バックでは、両サイドの上下の動きが中途半端で、いらないスペースが空き、バラつきが出ていたが、4バックでは、コンパクトにラインをコントロールできていたし、バランスよく守れていた。戦術に幅を持たせるため、3バックというオプションは、残しておいたほうがいいが、本番では、この4バックをベースにすべきだろう。
 
 問題は頭では理解していても体がついていかないという部分だ。もうひとつチームがレベルアップするためには、そのギャップを埋めていく作業が必要になる。細かい部分の連携を深めて、チームのフィット感を高めていかなければ、本番でも同じ過ちを繰り返すことになる。
 チームに危機感も足りないように思う。長友は「このままでは勝てない」と談話を残していたが、長友自身がもっと強いリーダーシップを取るべきだろう。
 
 西野監督は、最後の強化試合となる12日のパラグアイ戦で、サブのメンバーを使うことをほのめかした。まだメンバーの組み合わせに悩んでいて、テストしたいことがあるのか。それとも選手のコンディションを最優先に考えて疲労軽減を目的としているのか。その狙いがよくわからない。本来ならば、メンバーを固めて1試合でも多く連携や、細かいコンビネーションを合わせておきたいところだろう。
 ただ今回、選んだ23人の平均年齢は28.2歳で、この日のスタメンでも、川島、長谷部、本田、長友、槙野の5人が30代。ここで疲労をためると本番でコンディションを崩すというリスクがある。
 その点を考慮すると短期間に試合を詰めこむことも難しい。西野監督のジレンマも理解できる。コンディション優先の選手起用と、スケジュールになることもやむを得ないのかもしれない。
 それでも、西野監督は、その意図をチーム内外にハッキリと伝えておいた方がいい。コロンビア戦の戦術についても同じことが言える。もうゲームへの入り方を明確にしておくべきだ。
 この2試合のように前半の時間帯に失点すればジ・エンドだろう。
「前半は守備的に戦いゼロに抑える」という意識と戦術をこの時点から徹底させておくべきで、残り1試合を有効に使わねば、ロシアで厳しい結果を突きつけられることになりかねない。

(文責・城彰二/元日本代表FW)