大島の株が上昇。長谷部の相棒候補として一歩抜け出した感も

 6月8日のスイス戦で明らかに評価を下げたのが、PK献上のきっかけを作った右SBの酒井高徳、攻撃面でてんでダメだった左サイドハーフの宇佐美貴史、スローイングからまさかのピンチを招いたGKの川島永嗣、そして最も得意なトップ下で速さも強さも見せつけられなかった本田圭佑の4人だ。
 
 ただ、GKの序列はそれでも川島を一番手とした。二番手候補の東口順昭がここからコロンビア戦(ロシア・ワールドカップの初戦)のピッチに立つ可能性を高めるには、おそらく先発起用される次のパラグアイ戦(6月12日)で結果を残すしかない。練習で好セーブを披露し、コンディションの良さをアピールしている東口だけに、ひょっとするとひょっとするかもしれない。
 
 DFは昌子源も植田直通も、さらに遠藤航も試されてないので、現時点で彼らをスタメン候補に推す理由がない。いわゆる消去法では、CBが吉田麻也と槙野智章、左サイドバックが長友佑都になる。右サイドバックはコンディションさえ整えば酒井宏樹がスタメン候補。スイス戦で乱調だった酒井高は右サイドバックの3番手に降格したと見る。
 
 ボランチはスイス戦で繋ぎ役としての役割を果たした大島僚太、最低限の仕事をした長谷部誠が引き続きスタメン候補。ただ、ここにきて大島の株が上昇。山口蛍、柴崎岳よりも一歩抜け出した印象もある。長谷部はキャプテンという重責も担っている以上、サブに降格することはなさそうなので、このまま行くと「長谷部&大島」がコロンビア戦のスターティングメンバ―になるか。
 
 西野朗監督のパラグアイ戦までに「全員使う」という言葉を鵜呑みにすれば、パラグアイ戦では山口と柴崎にチャンスが与えられる。柴崎はスイス戦でも81分にCKからチャンスを演出しているので、次の試合で改めてセットプレーのキッカーとして存在感を示せれば、序列アップを果たせるかもしれない。山口はコンディション次第。ガーナ戦は調整に失敗したそうで、万全ではなかった。パラグアイ戦で“本気の山口”を見ることができたら、ボランチの定位置争いは熱くなりそうだ。
 
 今回のスイス戦の結果を受け、もっとも序列が変動したのが2列目だろう。右サイドこそ依然原口元気が一番手と予想したものの(対抗馬となる選手が見当たらないので)、トップ下、左サイドはそれぞれ香川真司、乾貴士が一番手になるか。
 
香川も乾もパラグアイ戦で先発出場するだろう

 スイス戦で往年の輝きを放てなかった本田はトップ下で結果を残せず、本人も自身の出来に納得していない。途中出場の香川のほうが軽快な動きを見せており、両者の立場が現時点で逆転していても不思議はない。いずれにしても、香川がパラグアイ戦でスタメンを張る確率はかなり高そう。
 
 テクニシャンの乾もコンディションはそれなりに整っているような印象なので、宇佐美に代わりパラグアイ戦では先発に名を連ねるだろう。手詰まり感があった攻撃に変化を出してくれるのではないかという期待感が、乾と香川にはある。
 
 トップ下の本田が機能せず、前線の大黒柱と目される大迫勇也も腰を負傷するなどポジティブな材料があまり見当たらない攻撃陣にとって乾と香川は“最後の希望”と言えるだろうか。CFの武藤嘉紀もスイス戦でぱっとしなかったこともあり、そのふたりにかかる期待は大きい。
 
 3バックもダメ、本田のトップ下もダメ。西野監督の就任当初は「もしかしたら何かが変わるかも」と期待する向きもあったが、ここにきて厳しい現実を突きつけられている。パラグアイ戦で香川も乾もダメとなれば、日本はそれこそ最悪な状況でコロンビアとの一戦を迎えることになる。
 
 スイス戦での完敗を受け、長谷部はこう語った。
 
「残り本大会まで1試合なので、そこを大事にしなくちゃいけない。今までチャンスが少ない選手が(パラグアイ戦で)活躍できれば、化学反応が起こるかもしれないですし、考え方次第です」
 
 化学反応が起きなかった時、西野ジャパンは文字通り手詰まりになる。
 
取材・文:白鳥和洋(サッカーダイジェスト編集部)
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180609-00041692-sdigestw-socc&;p=2