「テレビ番組では芸人のギャグがスベったり、トークがつまらなかったり、議論や批評が熱を帯び過ぎたりして、その場がヤバい空気、重たい空気に包まれることがあります。これが生放送だと、そのヤバさは計り知れません。しかし、トークの達人のタモリさんが司会をすると、こうしたヤバい空気は生放送でも生まれません。そこには場の空気を一瞬で変えてしまうトーク術があります。今回は『1秒で気のきいた一言が出るハリウッド流すごい会話術』の中から、タモリさんの、あらゆるシーンを好転させる術を紹介いたします。

● 場の空気が悪くなる展開を どうやって打破するか?

 人間の性格は十人十色でバラバラです。ですから人生では、「かなり短気な人」と「空気を読みすぎる心配性の人」という組み合わせで飲食店に行く事もあるでしょう。

 そんな時、態度の悪い店員さんに当たってしまうと最悪です。短気な人は、「何だ、あの店員は」と、必要以上にピリピリします。そうなると、今度は空気を読みすぎる人が、短気な人が作り出す重い空気に耐えきれずにオロオロし始めます。

 そして、注意力が散漫となって飲み物のグラスを倒してしまったとします。

 必要に迫られ態度の悪い店員を呼ぶ事になるのですが、いくら呼んでも店員が来ません。こうして短気な人の顔はどんどん曇っていきます。一方、飲み物を倒した心配症の人は、自分が全てを引き起こしたと自分を責め始め、過剰にまわりに謝りはじめます。

 すると、短気な人は「お前じゃない。あの店員のせいだから。ハッキリ文句言ってやる!」と、とても気合が入ってしまい、いっそう険悪な空気になってしまいます。

 こんな時どうすればいいのでしょうか。たいていの人が最初に試みる「怒っている人をなだめる」という手段は、失敗する事が多いのです。

● 振り上げたこぶしを 下ろせない人への対処法とは

 例えば、誰かが「まあまあ、人手不足で店員さんも忙しいんじゃないの? 濡れた場所も少ないから、とりあえずこのまま飲もう」という感じでなだめたとします。でも、この程度の説得で振り上げたこぶしを下ろす性格なら、最初からここまで怒りません。「いや、店員が8人もいて、客席が半分も埋まってないから、あの店員がボーっとしているんだよ」と冷静に分析していたりするものです。

 そうなってしまうと次に何と言っていいのか誰もわからず、嫌な雰囲気が生まれます。

 では、どうすればいいのでしょうか。こういった、どうしようもない重々しい空気を変えるには、「会話の土台からひっくり返す」という術を使うしかありません。

 事例の会話の土台は、「こぼれた飲み物」です。これで固まってしまっていて、会話参加者の全員が、このトピックに縛り付けられています。

 具体的に検証します。怒っている人は、「飲み物がこぼれているのに呼んでも来ない店員」について話をしています。こぼした本人は、「飲み物をこぼした自分が悪い」という事について話をしています。そして、仲裁に入ろうという人は、「飲みものをこぼした事なんて、もういいじゃん!」と話そうとしているわけです。

 ですから、空気を変えたければ、「こぼれた飲み物」とは全く関係のない話題を、真逆のテンションで話し出してみましょう。

 例えば、怒っている人が「店員が来ない! 何分待たすんだ!」と腕時計を見た瞬間、高めのテンションで「あ、これオメガじゃん! すごい!」と言ったらどうでしょう。キレている人も意表を突かれた事で、怒りのテンションが和らぎ、「まあね、最近、買ったんだ」と言ってくれる可能性があります。そして、例えばブランド時計の話題を続けるなど、その方向に会話を引っ張っていって空気を変えればよいのです。

つづく

イラスト
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ダイヤモンドオンライン 6/9(土) 6:00
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