プロ野球の中日や近鉄などで投手として活躍した門倉健さん(44)と民江夫人(49)は4年前、
「保護犬」ランディーとの出会いと別れを通じてペットと暮らすかけがえのない時間、命の大切さを学んだ。
現在も殺処分寸前の犬の里親となり、動物愛護運動にも尽力。夫妻の「ペット愛」に迫った。(桃井 光一)

動物好きの民江さんは2014年9月、SNSを通じて栃木県の保健所に保護された16歳の老犬の殺処分が近いことを知った。
飼い主に捨てられたその犬は、病気を発症してマダニもいる状態だったが、民江さんは「この子をコンクリートの上では死なせたくない」
という思いがつのった。当時、韓国のサムスン・ライオンズのコーチだった夫の門倉さんに電話で相談。

長女・りおさん(15)の「どうして処分されちゃうの? ウチに連れてきて」という言葉にも後押しされ、
民江さんは栃木県に出向いて老犬を引き取り「ランディー」と名付けた。

保健所の関係者から「みとる覚悟でお願いします」と言われたが、ランディーは体力を回復。
当初、心配された夜泣きやかむ癖もなく、1か月後には「諦めたような表情がなくなった。顔つきが変わったね」と友人に指摘され、
家族全員で喜んだ。だが、12月半ばから食欲がなくなり、獣医師に脾臓(ひぞう)がんと診断され、31日に旅立った。

わずか3か月、家族として過ごしたランディー。門倉さんは「おしっこをする時、頑張って立ち上がったり、
彼は一生懸命に生きようとしてた。僕たちもすごくかわいがったし、犬のことを勉強するようになった。
まあ、カミさんのすごい決断力と行動力のおかげですね」と振り返った。

16年6月には破綻したブリーダーの犬舎に放置されていたオレオ(シベリアンハスキー雄7歳)を、
17年11月には野犬として保護されたモカ(ミックス雌、年齢不詳)を引き取って里親になった。
民江さんは「モカは人見知りで外に出ると逃げようとする。オレオは甘えん坊なのにモカに寄り添ってくれる優しい子。
私たちとは縁があったんです」と、いとおしそうに“わが子”を見つめた。

ランディーを迎え入れたことをきっかけに、保護犬・保護猫活動に取り組むようになった門倉夫妻。
民江さんは犬の管理栄養士やメディカルアロマアドバイザーなどの資格を取得した。

門倉さんは今年1月、殺処分をなくす「TOKYO ZERO」キャンペーンの呼び掛け人の一人として、
動物愛護行政を所管する中川雅治環境相に面会。生後間もない犬や猫のペットショップへの引き渡し禁止期間を、
欧米並みに延ばすことなどを訴えた。

門倉さんは「ランディーを見送った時、この子の『犬生』は何だったのか、私たちといて幸せだったのかと自問自答した。
でも、彼のように老犬だから、病気だからという身勝手な理由で捨てられる子は増やしたくない。
命の大切さを呼び掛け、殺処分のない日がくるように活動していきます」と力を込めた。

〇…門倉家には現在、保護犬2匹のほか、キャンディ(雌9歳)、ショコラ(雌7歳)、知人から預かっているアリエル(雌6歳)の
トイプードル3匹と“同居”。門倉さんによると「家族の役割は決まっていまして、娘のりおがしつけ、ママがご飯、私が散歩を担当してます」とか。
以前はウサギのミルク(雄)も飼育していたという。

◆門倉 健(かどくら・けん)1973年7月29日、埼玉・入間市生まれ。44歳。聖望学園高から東北福祉大に進み、
95年にドラフト2位で中日入団。193センチの長身から繰り出す速球を武器に、近鉄や横浜、巨人でも活躍し通算76勝82敗10S。
韓国のSKワイバーンズ、三星ライオンズでも27勝(17敗)し、三星ではコーチも務めた。現在は野球解説のほか、少年野球チームの指導者として飛び回る。

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