――社内で配信先の選定を行う判断基準などは存在しましたか。

Z社:弊社サービスをご利用いただくにあたりまして、利用規約に同意して頂くことで広告掲載が開始されます。しかしながら違法性のある、または違法性の高い媒体を全て排除できているわけではないため、著作権者等からの問い合わせ・通報を頂き次第、調査の上速やかに掲載停止の対応をとっております。

――結果的に海賊サイトに資金を提供し、著作権侵害のほう助を行っていたことについてどのように考えていますか。

Z社:結果的には海賊版サイトへの資金を提供していた形になってしまったことは事実ですので、今後は管理体制を強化し健全化を推進してまいります。

●海賊版サイトに広告を出して効果はあるのか?

Z社の回答では「海賊版サイトと認識していなかった」とのことですが、中には海賊版サイトと知っていてあえて出稿していた代理店もあったといいます。なぜ広告代理店はリスクを負ってまで海賊版サイトに広告を出稿するのか。こうした状況について、ある関係者は前述のZ社の内部事情について「2〜3年前ごろのAnitubeは非常に費用対効果の高いサイトと認識されていた」と語ります。

例えば“バナーを1クリックされたらいくら”という単価の広告の場合、クリック後の成約率(発火率)の高さによって広告単価が決まるため、調子の良いものの場合、1クリック20〜30円程度の単価のものがあったとのこと。仮に押し間違いなどでバナーがクリックされたとしてもその後の発火率が低ければ結局単価は上がらないため、結果的にAnitubeは成約率が非常に高いサイトであったということになります。

いずれにせよ無料視聴をうたうAnitubeなどの海賊版サイトをきっかけにオンラインゲームコンテンツや電子コミックビジネスの顧客が増えていたのだとすれば皮肉なことです。

●漫画村問題で注目を集めた裏広告

漫画村問題の露見とともに注目されているのが「裏広告」です。裏広告は2016年前後に「アドフラウド」という名前で話題になったもので、ユーザーが見られるページの表面には何の広告も表示されていないのに、管理者モードなどで確認してみると、ページ内に“見えない広告”が表示されている状態を指します。

4月18日に放送されたNHK クローズアップ現代+「追跡!
脅威の“海賊版”漫画サイト」で、漫画村でも裏広告が存在していたと取り上げられると、「実際には表示されていない広告に広告料が支払われていたのでは」とする疑惑が持ちあがり、詐欺にあたるのではないかと物議をかもしています。

関係者に「裏広告は誰が仕込んでいるのか」を聞いてみたところ、主にはメディア側(海賊版サイトなど)だろうとの回答。広告代理店側が裏広告に関与していたとなると出稿企業からの信用をなくしてしまうため、積極的に裏広告を出すことは考えにくいとのことでした。

●Anitubeの運営者、現地で起訴されていた

また一連の取材の過程で、2016年に日本のアニメ制作会社がブラジル・ウベルランジア警察に対して、Anitubeに関する権利侵害の告発を行っていたことが分かりました。コンテンツ海外流通促進機構CODAによると、運営者は2017年10月4日に現地の刑事裁判所へ起訴されたとのこと。5月8日時点ではまだ公判は開かれていない状態ですが、起訴後もサイトが閲覧できない状態になった4月16日ごろまで更新を続けるなど、悪質性は高いとみられます。

またAnitubeと同じくサイトブロッキングの名指しを受けた動画サイト「MioMio」についても、運営者が中国・国家版権局により特定されているとCODAは述べています。権利者によりすでに投訴(陳情のこと)が行われており、日本の関係機関は情報開示を求めているとのことです。

ねとらぼ編集部では引き続き、広告代理店と海賊版サイトとの関係性や問題の解決にはどのような取組が必要なのか取材を続けていきます。

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