ひな壇の上に置かれたマイクを通して発せられていた、前日本代表監督の声のトーンが突然高くなった。日本サッカー界史上でも前例のない記者会見が始まってから、20分が過ぎたころだった。

「3年前から私は誰とも、特に選手とは何の問題もなかった。この3年間、国内組であろうと海外組であろうと、常に選手たちと連絡を取り合っていた。海外組の選手と何度電話で話したことか。国内組も同じだ。連絡を取り合うことを、コンスタントに行ってきた」

 東京・千代田区の日本記者クラブで27日に行われた、ヴァイッド・ハリルホジッチ氏の緊急記者会見。開始予定時刻の午後4時より5分前に会場へ姿を現し、終了予定時刻の同5時を30分以上も超えたなかで、集まった332人のメディアを前にして最初に力が込められた瞬間だった。

 パリ市内のホテルで話し合いの場を急きょ設けた、日本サッカー協会(JFA)の田嶋幸三会長から解任を通告されたのが現地時間4月7日。最大の理由として同会長があげた、「選手とのコミュニケーションや信頼関係の部分が多少薄れてきた」に対して、ハリルホジッチ氏が真っ向から異を唱えた。

「コミュニケーションというのは、意味があまりにも広すぎる。相手が誰なのかを、詳しく教えてほしい。私の知らないところで、知らない話が行われている気がする」

 ただ、心当たりがないわけではなかった。過去のワールドカップ予選で勝ったことがなかった、難敵オーストラリア代表に2‐0で完勝。ロシア行きのチケットをもぎ取った、昨年8月31日のアジア最終予選後のチームに対してちょっとした違和感を覚えたと当時の心境を明かした。

「2人の選手が少しがっかりしていた。最終予選を突破したが、試合に出なかったからだ。それまでは何年も試合に出ていた彼らが、がっかりしていることを私は悲しく思った」

 日本代表の常連でオーストラリア戦のピッチに立たなかった選手は、FW本田圭佑(パチューカ)とMF香川真司(ボルシア・ドルトムント)となる。そして、3月下旬のベルギー遠征の初戦、マリ代表と1‐1で引き分けてから一夜明けた現地時間24日にも、ちょっとした「事件」が起こったという。

 ハリルホジッチ氏は急いでパリへ移動し、ナイトゲームで行われたフランス代表とコロンビア代表の国際親善試合を視察。日本がグループリーグ初戦で対峙するコロンビアの逆転勝利を目に焼きつけ、夜明け前にリエージュへ戻ってきた。

「一人の選手があまりいい状態ではない。注意したほうがいいかもしれない」

 代表チームをサポートする技術委員会のトップで、いま現在は自身の後任監督に就いている西野朗委員長から、ある選手が不満を募らせていると示唆された。

「わかっている。それは後で解決できる」

 問題なしとその場を収めたハリルホジッチ氏をして、ベルギー遠征後の展開は「青天の霹靂だった」と言わしめるものだった。

「残念ながらその後にいろいろなことが起こった。(田嶋)会長がたくさんの選手やコーチに連絡を取ったが、私にも(3人の外国人)コーチにも説明がなかった」

 技術委員会も知らない水面下で奔走した田嶋会長は、ハリルホジッチ氏との契約を解除することを決断。西野委員長に後任監督のオファーを出したうえで、極秘でフランスへ飛んで通告を行った。

つづく

4/28(土) 5:01配信 THE PAGES
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