野坂昭如の経験談を基にした私小説だが、
私小説の常で作者本人の美化や責任転嫁がある。
元々はモーニングショーで評判を呼んだトーク。
その辺は美輪明宏のヨイトマケと同じ。
それを、直木賞狙いで感傷的なメロドラマの短編小説に仕立て、
見事、ベストセラーとなり直木賞を獲得。
それまでは放送作家上がりの黒眼鏡の胡散臭い雑文家やエロ小説のイメージが、
これでシリアスな作家として認められた。
成功が大きいだけ、野坂はこの作品での自己欺瞞を気に病み、
重度のアル中になり、死ぬまで解放されなかった。