ハリルホジッチは、まさに鬼才だった!

 ハリルさんは鬼才。

 その情熱はまさに火の鳥だ。

 彼が怒りを持って飛んでいくと、ついて行く忠実なフォロワーたちも火傷をする。

 あの分厚い眉毛から稲妻が放たれ、雷が落ちる。

 温室育ちの日本人選手たちはその前で萎縮し、他の日本人スタッフにも猛獣使いのノウハウはなかったのだろう。

 「私なら出来る!」と思い、日本サッカー協会にアピールして、いくつかの仕事を私も任されることになった。しかし、私と同様に異文化を知り、ハリルさんの波乱万丈な人生も理解している人間が、本当は、さらに3、4人は必要だったのではないだろうかと思っている。

彼を少し讃えてから話せば良いだけだったのに……。

 もちろん彼には優しい面もあった。

 娘さんへの愛情、家族との絆、フランス・メディアにも冗談を飛ばす姿があった。解任1週間前には、フランスの伝説的なサッカー番組『TELEFOOT』への生出演があり、多くのサッカーファンへ自信に溢れ、かつお茶目な姿を見せていた。

 絶好調だった。

 「ロシア大会が待ち遠しい」と良い緊張感もあった。

 思い返せば、日本での彼の記者会見やテレビ出演はいつも硬かった。取材する側は彼のツボを掴めなかった。彼を少し讃えてから話を始めれば、すぐにあの殻は破れるのだ。

 「そんな必要はない!」と言われるかもしれないが、これこそ日本人が苦手な外交、異文化コミュニケーションだと私は思う。

 ボスニアやアフリカでは、大事な話をする前に、お茶をしたり四季の話をしたり、ジョークも飛ばすものなのだ。

田嶋会長もフランス大使館に謝罪。

 ハリルさんは監督を解任されたが、私には引き続きフランス大使館と彼の間の橋渡し役として、残っているいくつかの仕事がある。

 フランス名誉市民の彼を私たちフランスがアシストしなければならない。

 日仏交流160周年の今年、日本がW杯をフランス人の監督で戦わなくなったことをとても寂しく思う。

 田嶋会長も私を通じてフランス大使に謝った。

 私はただ、3人の大事な友達、ハリルさん、ジャッキーさん、シリル(・モワンヌ/前日本代表フィジカルコーチ)さんを失うのが辛い。

 1つのミッションが終わった。失敗で終わった。いまは反省するより、それをゆっくり悲しみたい。

(「サッカー日本代表PRESS」フローラン・ダバディ = 文)