2018/04/09
【のん】「ヘタクソだからやっちゃダメ」って、誰が決めるんだろう
文:大矢幸世 写真:伊藤圭

女優、創作あーちすととして活躍するのんさん。2年前に個人事務所「株式会社non」を立ち上げ、活躍の場を広げています。大勢をまとめるリーダーとして皆を巻き込み、やりたいことを実現する彼女の、仕事に対する思いを聞きました。

 のん、になってから、もうすぐ2年が経とうとしています。

「声の仕事が増えていますね」「活動がますます幅広くなっていますね」とか、いろんな反応をいただくのですが、私は相変わらず、です。

 心に残っているのは、映画「この世界の片隅に」。主人公のすず役を務めたとても大切な作品で、原作を読んだときに、「絶対にやりたい!」と思ったんです。この作品は監督をはじめ、関わっている全員が、みんな同じ気持ちで作っている感覚がありました。そのチームの思いが、ご覧いただいた皆さんにも伝わって、少しずつ、いろんなことに繋がっていったのかな、って思っています。

◆どんな仕事でも「私がやる意味」を考える

 演技すること、声だけで表現すること、音楽を作ること、歌うこと、絵を描くこと……それぞれの仕事で、自分がどう身体を使うか、どういう方法で取り組むかはまったく違います。

 そのつど、「自分ならどうするか」と考えながら、仕事に向き合っていくのですが、それによって自分自身が変化する、ということはありません。どんな仕事であっても、自分――のん、というひとりの人間――がやる意味は何なのか、それを研ぎ澄ませていくような感覚なんです。

 「こんなことをしてみませんか?」と新しいお仕事にお声がけいただいたときは、自分がやってみて面白いかどうかを考えます。それから、私がやりたくないこと、やらなくてもいいことはやらない、ということも大切にしています。たとえばキスシーンとか。それは、私じゃなくてもすてきな方がたくさんいらっしゃるから。でも、だいたい面白そうに思えるので、どんどん「やります!」とお答えしていたら、ちょっと忙しくなってしまいました(笑)。

 昨年末に、YouTube Originalsで私が監督、脚本、出演する作品の撮影をしたんです。今、編集作業中なのですが、自分の意図や撮りたいイメージをスタッフの皆さんに伝えながら、どう動いてもらうのかを考えなくてはいけなくて……。ついつい気を張って、険しい顔になってしまいがちなので、「明るく声をかけなきゃ!」とハッとしました。現場が沈んでもいけないので。

 ムードを大切にしながらも、良い仕事をするために、自分の考えははっきり言うようにしています。あやふやなことを言うとみんなバタバタしてしまう。その代わり、迷ったときは「ちょっと悩んでいるけれどどう思いますか?」って、素直に言っています。

 でも、皆さん「のんと一緒に仕事をする」というのを面白がって協力してくださるので、エネルギーが真っ直ぐ目的地へ向かっていっている気がします。やりたいことはやりながらも、チームのみんなの生活のために支える役割もあるので、バランスを考えながら仕事をしています。


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