あの人は今  元日本ハムファイターズ 清宮幸太郎さん(20歳)

2020年、東京オリンピック。 それをテレビで見つめる男がいた。
18歳で将来を嘱望され日本ハムファイターズへ入団した、清宮幸太郎さんだ。
「あの頃は若かったですね(笑)」若き日を回想する清宮幸太郎は、どこか寂しげだ。
「未だに当時の夢を見ることがあるんですよ。オリンピックで、俺がホームラン打って活躍する夢を」
清宮さんは18歳の時にオープン戦出場過多の影響で腹膜炎にかかり、1年間リハビリを続けたが
結局完治することはなく、ファイターズから戦力外通告を受けた。
今は炉端焼き屋を営む傍ら、地元の少年野球のコーチを勤めている。
暖簾の屋号の文字は元ファイターズ、栗山監督の手によるものだ。
「いらっしゃい」。釧路駅東口から歩いて3分。
「炉端焼き 大仏」のえび茶色の暖簾をくぐって店内に入ると白いタオルを
頭に巻いた清宮幸太郎さんと妻、彩さんの元気な声に迎えられた。
「去年の4月にオープンしました。暖簾の『大仏』という文字は栗山さんに書いて
いただいたものだし、開店に合わせてスポーツ紙やテレビでも取り上げてもらった。
おかげで、本州から足を運んでくださるお客さんが多かったのはうれしかったですね」
清宮さんは本当に嬉しそうに、僕たちに語ってくれた。
とはいえ、その分、プレッシャーも大きかったという。
「炉端焼き好きは飛行機に乗って本場・北海道まで食べ歩きに出かける時代でしょ。
ボクが修業したすすきのの老舗『コロポックリ』のものは白味噌がベースなのが特徴だから
すすきののような炉端焼きだと信じ込んでる道産子にはモノ足りないようなんです。
それで怒られちゃったこともあるけどそれも修業のうち。我慢、我慢です」
かつてのライバルで現カープ所属の中村について尋ねると…
「知ってます?18歳までは僕の方が(通算本塁打数)上だったんですよ?」と、おどけ
「俺も腹膜炎さえ無ければって…歯がゆいですけど」
「今はもう現役に未練はありません。今度はこの、炉端焼きで日本一になれるよう、
がんばるだけです!」
(写真)炉端焼きを手に持つ清宮さん