2月7日夜、「テレビ朝日」の特番『独占緊急特報!! 貴乃花親方すべてを語る』の放映があった。食い入るように見たが、
見終わった後もなお、すっきりしない。これだけ言うべきことがあったなら、貴乃花親方はなぜ、そのときどきに主張してこなかったのか?
なぜ、理事選が終わったいまになってから言うのか? なぜ、いくら弟子とはいえ、当事者の貴ノ岩を囲い続けて話させないのか?
という疑問が残ったからだ。

これまで、ワイドショーをはじめとするマスメディアは、「相撲協会=悪、貴乃花親方=正義」という構図
こういう対立構造がいちばん単純に物事を伝えやすいし、また、視聴者、読者を惹きつけるからだ。

 しかし、その結果、「貴乃花親方=正義」側にある数々の問題点はスルーされた。
そのため、正義感の強い坂上忍氏など数多くのコメンテーターが誘導され、みな“貴乃花擁護論”を展開してきた。
 もちろん私は、このことを冷ややかに見てきた。なぜそう見てきたのか? ここではその理由を整理して書き留めておきたい。

■貴乃花部屋でもあった「暴行事件」

 「スポニチ」が春日野部屋での4年前の暴行事件をスクープし、フジの「とくダネ!」が被害者の矢作嵐さんのインタビューを放映した。
しかし、貴乃花部屋でも同じような暴行事件があったことは報じなかった。

 貴乃花部屋の引退力士・貴斗志が貴乃花親方に無理やり引退届を出されたとして、2015年3月、相撲協会を相手取り「地位確認等請求」
「報酬の支払い」などを求めて東京地裁に提訴。この裁判の過程で、貴斗志は、なんと今回の日馬富士暴行事件の被害者・貴ノ岩から暴行を受けたと主張。
さらに2人の元貴乃花部屋の元力士が証言台に立ち、貴ノ岩や同じく貴乃花部屋の現世話人である嵐望などから暴行を受けたと証言している。

 さらに、資料を当たればすぐにわかることだが、2012年に「週刊新潮」(2012年5月3・10日号)は、
貴乃花親方からくり返し暴行を受けたという18歳の元弟子の告発を掲載している。
このときは、当時、協会の危機管理委員会副委員長を務めていた八角親方が「貴乃花親方に事情を聴いたが、暴行の事実は否定していた。
いまの状況で協会が介入することはない」として幕引きをしている。

■「裏金顧問」問題

 不思議なことに、この問題をテレビはほとんど報道しなかった。昨年12月28日、相撲協会は臨時理事会で、元顧問の小林慶彦氏(62)に
1億6500万円の損害賠償請求の訴訟を行ったと発表した。この訴訟は、小林氏が相撲協会から金銭をだまし取ったことを告発し、その損害賠償を求めたもの。

 小林氏は、2012年に力士をキャラクターにしたパチンコ台制作を業者と契約交渉中、代理店関係者から500万円の裏金を受け取っていたことが2014年に発覚し、
「裏金顧問」と呼ばれるようになった。そしてその後も金銭トラブルが跡をたたず、2016年1月に八角理事長によって協会を追放された。
しかし、小林氏はこれを不当として、地位保全の裁判を起こし、いまも協会と係争中である。

 この小林氏は、故・北の湖理事長が連れてきたコンサルで、貴乃花親方と親しくなり、貴乃花一門のパーティーには積極的に参加していた。
そんななか、八角理事長がまだ理事長代行だった2015年、小林氏がある会社の債券70億円分を協会に買わせようとしたとき、貴乃花親方は“援護射撃”を行った。
さらに、小林氏が追放されたとき、貴乃花親方は協会執行部に「なぜだ」と詰め寄った。