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 暴行事件による日馬富士の引退に加え、白鵬、稀勢の里の2横綱の休場という“異変”に見舞われた大相撲初場所だが、相撲人気は健在で、連日、満員御礼の盛況。だが、華々しい土俵上の戦いの裏で、もう一つの戦いが行われているという。ある親方がこう語る。

「今、親方衆同士が顔を会わせれば、場所後の2月に行われる理事選の話ばかりですよ。普段は仲がいい親方と国技館ですれ違っても、一門が違えばゆっくり話もできない雰囲気。『裏切り者』と言われかねませんからね。一門間の多数派工作が激化していて、どの一門もたびたび会合を開いては、戦略を練っています。みんな自分たちの票固めに必死で、疑心暗鬼になっている。先だってもある理事の親方と一緒になった時、『うちは本当にまとまってくれるのか……』と、心配そうに漏らしていた」

 年寄株を持つ親方たちの投票で10人の理事が選ばれる理事選をめぐり、6つある一門間で激しい駆け引きが繰り広げられているのだ。中でも注目されるのは、1月4日に理事を解任された貴乃花親方が率いる貴乃花一門の動向だ。

「貴乃花親方自身に加えて、2人目に誰を出してくるかが注目ですね。同じ一門の阿武松親方(元関脇・益荒雄)か、無所属となった錣山親方(元関脇・寺尾)か。貴乃花親方には一門外にもポリシーでつながっている親方がいて一門を超えて票をとる影響力があるのが、他の一門と決定的に違う。となると、票読みが非常に難しい。時津風一門を離脱した錣山親方ら3人はほぼ確実に貴乃花派に入れるでしょうし、2016年の『貴乃花ファミリー忘年会』の記念品のカレンダーで女装姿を披露した玉ノ井親方(元大関・栃東)や山響親方(元前頭・巌雄)あたりも出羽海一門ですが、実質は貴一派。昨年、長女が貴乃花親方の長男と結婚した陣幕親方(元前頭・富士乃真)は高砂一門ですが、造反の可能性がある」(前出の親方)

 一方、新興勢力である貴乃花一門の拡大を苦々しく思っているであろう協会執行部の理事たちも、足元の票固めに四苦八苦しているという。

「何しろ八角理事長自身が、安泰とはいえない状況なのです。というのも、八角理事長の高砂一門に所属する親方は12人で、つまり12票しかない。が、九重部屋の九重親方(元千代大海)は現役時代から貴乃花親方と親しく、八角理事長とは合わないので、貴乃花派に流れかねないとみられている。造反が出ると、八角理事長は10票程度とみられる当選ラインを確保するのがぎりぎりなのです」(同)

 時津風一門は、協会危機管理部長として貴乃花親方に再三、門前払いを食らった鏡山親方(元関脇・多賀竜)を、再び理事候補とする方針。二所ノ関一門は協会ナンバー2の尾車親方(元大関・琴風)に加え、入院中の二所ノ関親方(元大関若島津)に代わって、「スイーツ好き」としても有名な芝田山親方(元横綱・大乃国)を理事選に擁立する。

「時津風一門も、錣山親方ら3人が抜けたことで、今は一門内の結束固めに必死。2人を擁立する二所ノ関一門は20票が必要だが、たとえば一門内の佐渡ヶ嶽親方(元関脇・琴ノ若)などは、貴乃花とは現役時代に対戦して3つも金星をとるなど土俵上でしのぎを削った仲で、造反しても不思議ではない。二所ノ関一門は貴乃花親方の出身派閥で、現役力士にも貴乃花シンパが多いですからね。いずれにせよ、両一門とも、八角理事長に票を回しているような余裕はないでしょう」(同)

 この親方は「貴乃花親方の出方次第では、これまでにない凄まじい理事選になる」と予測する。貴乃花派、反貴乃花派のそれぞれからは、こんな声が挙がる。

「貴乃花親方は執行部から色々批判されているが、選挙で選ばれたなら否定できないはず。貴乃花派から2人の理事を当選させることで、いまの談合的体質を改め、不祥事のない相撲界に変えていける」(貴乃花派の親方)

「昔は理事選は無投票が慣例だったのに、貴乃花親方がかきまわし始めて、ギスギスするようになった。あいつは敵だとか、造反するとかで疑心暗鬼。こういう理事選はよくないよ。世間から見たら選挙がない方がおかしいと言われるかもしれないが、それがある意味、相撲界の伝統。貴乃花親方は、どうしてこんなに協会を混乱させるのか」(反貴乃花派の親方)

 両派の激突は、相撲界にどんな未来をもたらすのか。