サッカーというスポーツにおいて、なくてはならない存在であるレフェリー。試合を裁く彼らのジャッジはしばしば批判の対象となるが、誤った解釈によるものも少なくない。サッカーの競技規則を知ることで、判定についてもより建設的な議論ができるのではないだろうか。(取材・文:中山佑輔)

●Law of the Gameと言われるサッカーの競技規則

 Jリーグなどのプロリーグ、そしてときには高校サッカーなどでも、レフェリーが下した判定の正誤が問題になることがある。そのなかには審判団の判定が明確に誤っているものもあれば、議論の余地が残るもの、完全に判定が正しいものも混在している。

 ミスジャッジが批判の対象になることはやむをえないが、判定が正しいにもかかわらず、あたかも審判がミスを犯したかのような論じ方をされるケースも少なからず見られる。

 英語ではLaw of the Gameと言われるサッカーの競技規則。1863年にFA(イングランドサッカー協会)が取り入れて以降、年々改正されているこのルールに目を通したことのある人はどれほどいるだろうか。

 もちろん審判員であったり、熱心なファン、プレーヤーは読んだことがあるかもしれないが、多くの競技者・観戦者は、競技規則そのものを読むという機会がほとんどないだろう。

 だがそれにもかかわらず、観戦やプレーの経験があることで競技規則を理解した気になってしまってはいないだろうか。一昨年サッカー史上もっとも大きな競技規則の改正があったが、そんな時期であるからこそ、そもそも競技規則とはどのようなものなのかについて目を向けてみたい。

 サッカーの競技規則とは誰が決めているのか。1848年に明文化されたケンブリッジルールを、FAが修正採用したのがその15年後である1863年。その後国際試合(といっても英国内であるが)を開催するためにFAがスコットランド、アイルランド、ウェールズの4協会を招き、統一ルールを設けることに。

そして1886年にこの4協会によって設立されたのがIFAB(International Football Association Board:国際サッカー評議会)。現在にいたるまで競技規則改正の権利を持った唯一の機関である。

●規則改正の提案はJFAも可能

 このIFABより遅れて1904年に誕生したFIFA(国際サッカー連盟)は、このIFABによる競技規則を採用したが、IFABのメンバーに加わったのは1913年のこと。英国4協会(現在はアイルランドではなく北アイルランドが入っている)がそれぞれ投票権を1票ずつ持っているなかで、FIFAが持っている投票権も1票であった。

 日本サッカー協会(JFA)審判委員会の小川佳実審判委員長はIFAB、FIFA、各国サッカー協会、競技規則の関係について次のように説明してくれた。

「国際サッカー評議会は1886年に英国4協会でできました。これがスタートラインでFIFAは1913年にIFABに加わった。FIFAにIFABが入ったのではなくて、IFABにFIFAが入ったんです。

 英国4協会とFIFAで競技規則を決めましょうということになったんですが、昔はFIFAにも1票の権限しかなかった。各協会も1票ずつ持っていて、計5票。そのうち3票取れば、競技規則を変えましょう。そうでなければ変えませんということでした。

 それが今はFIFAが4票も持っている。英国4協会が各1票持っていて、計8票。このうち6票取れば変わるということになってきているんですよ。FIFAの力が強まっているんです。そういう状況ですが、改正の提案は日本サッカー協会も含め、色々な国ができるんですよ」

 改正の提案はできるといっても、競技規則を変更する権限はJFAに与えられていない。トップレベルの試合はIFABで定められる規則にのっとらなければならない。ただし、ユース年代や年長者、グラスルーツのレベルで行われるサッカーについては、各国サッカー協会で弾各国サッカー協会で弾力的に変更できることとなっている

つづく

1/12(金) 10:40配信
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20180112-00010001-footballc-socc