今年の出場歌手が発表された『第68回NHK紅白歌合戦』。10組の歌手が初出場するが、「目玉不足」と指摘されるほど話題性に乏しい。識者は今年の出場歌手をどう見るのか。コラムニストのペリー荻野さんが指摘する。
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 そんなわけで発表された「紅白歌合戦」の出場者。例によって、「安室奈美恵は出るのか」「朝ドラ『ひよっこ』の主題歌を歌った桑田佳祐は」と誰が出るかよりも、出るか出ないかわからないアーティストのことが話題になるという展開で、昨年のSMAPに続き、ギリギリまで引っ張られることになっている。

 私はこの夏、このコラムで出場予想を勝手にして、丘みどりと元ヒーロー俳優を中心した『スーパー銭湯のアイドル』の歌謡グループ「純烈」と丘みどりが有力ではと書いた。丘みどりは、予想通り今年見事に初出場が実現。『ミヤネ屋』などでは、丘のことは「元アイドルという異色の経歴」という程度の紹介だったが、実際は、芸能界に憧れた母の期待を背負い、ミニスカブーツで演歌を歌ったり、下積みをしてきた苦労人である。

「紅白」には、初出場のステージで感極まって涙じんわりの「苦労人枠」は必須。三山ひろし、市川由紀乃と続いたこの枠は確実に弾き継がれることとなった。初出場組の会見映像を観ていたら、結成30周年のエレファントカシマシ宮本浩次も目を細めて「どうすればいいんでしょうかね」「全力であの…」と言葉がなかなかまとまらないほどの興奮ぶり。丘みどりに対抗する白組の「苦労人枠」は、竹原ピストルでも三浦大知でもなく、エレカシではないかという気がしてきた。

 一方、純烈は初出場ならず。個人的には残念である。結成以来、「夢は紅白、親孝行」を前面に打ち出し、楽曲はオリコンチャート演歌・歌謡ランキングで1位を獲得したこともある。どう考えても話題性のある彼らが選ばれなかったのは、今年の出場選考の謎のひとつだと思う。

 深読みすれば、『紅白出場』の目標があるからこそ、夢を追いかける彼らを応援したくなるというもの。さらに黄色い風呂桶を手にしたダンサーとともに持ち歌『愛でしばりたい』を歌い踊る彼らのような、にぎやかな「お祭り枠」は、2020年をにらんだ「五輪枠」にとっておかれたという可能性もあったりして?

さまざまな謎を感じる今年の「紅白」だが、やはり最大の謎は、大河ドラマ『おんな城主直虎』で1年間頑張ってきた柴咲コウも菅田将暉も話題になっていないことだ。特に菅田は、今年一番多忙な俳優として、「移動にヘリを使った」と『嵐にしやがれ』でも話題にもなるほどの大活躍。auのCMでの鬼ちゃん姿でも歌った楽曲『見たこともない景色』も話題になっている。紅白出場もアリだったのでは?

 思えば、昨年の紅白ではAIが『みんながみんな英雄』、桐谷健太が『海の声〜みんなの海の声バージョン〜』を歌い、三太郎CM楽曲が揃った。今年も『やってみよう』のWANIMA初出場で三太郎シリーズが続く。そのため菅田はあえて登場せずとなったのか。ならば、いっそ、WANIMA応援のため、菅田がヘリで駆けつけるくらいの仕掛けがあってもいい。

 意外に地味で「どうなるんだ」と心配になるようなはじけキャラ不在の今年の紅白。安室も桑田も大事だが、年に一度の「仕掛け」も重要だ。
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