将棋は学歴で指すわけではない。そんなことは分かっていても、高校ぐらいは出てもらいたいのが「親」というものである。
進学に疑問を抱きながらも、高校進学することになった天才棋士・藤井聡太四段(15)が、母親の“封じ手”を破る一手とは。

10月25日、藤井四段は日本将棋連盟を通じて、高校進学を決めたと発表した。

現在、名古屋大学教育学部附属中学3年生なので、同高校にそのまま内部進学することになる。
とはいえ、藤井四段が進学に疑問を抱いていたことは、本誌(「週刊新潮」)でも報じたとおりだ。

将棋関係者が言う。
「藤井君は公式連勝記録が29でストップしたあと対局の戦績が思わしくありませんでした。
それもあったのでしょうか、彼は“学校に行く意味はあるんでしょうか”と聞いてきたことがありました。
“(学校に行くのは)面倒くさい。将棋が強くなるために時間を使いたい”とも。
母親からは“高校ぐらいは出て欲しい”と言われていると話していましたね」

だが、もともと藤井四段の母親は、息子の一番の味方でもある。

将棋ライターの松本博文氏によると、
「藤井四段の自宅(愛知県瀬戸市)から学校まで、電車を使って50分ほどかかりますが、中高一貫校への進学を勧めたのは母親でした。
受験と奨励会の三段リーグ戦が重ならないように、という配慮からです」

将棋に打ち込める環境を作ったことも奏功して、藤井四段は史上最年少でプロデビュー。以降の活躍はご存じの通りである。
だが、厳しいプロの世界を目の当たりにして、その環境さえも藤井四段は“足かせ”に感じたのだろうか。

将棋連盟理事の森下卓九段が言う。
「たしかに15歳から20歳ぐらいまでは一番棋力が伸びる時期です。吸収力が凄いですからね。
だから、藤井四段がどこまで将棋に時間をつぎ込むことが出来るのか、将棋関係者の誰もが気にかけていることだと思います」

通信制高校からスカウト

実をいえば、29連勝のあと藤井家にはいくつかのオファーがあったという。
「進路をめぐっては、通信制の第一学院高校を展開するウィザスが、学業と将棋の両立が出来るようにするから是非にとアプローチしてきたのです。
“支度金”も数百万円出すと言う。また、同じことを角川ドワンゴ学園も言って来た。
こちらは数千万円をオファーしてきました。藤井家は両方とも断りましたけど」(先の将棋関係者)

そこで、母親の裕子さんに聞いてみると、
「(高校への内部進学は)本人と話し合って決めたことです。本人も納得していることですから……」

だが、勝てば勝つほど忙しくなるのがプロ将棋の世界である。
「勝ち続ければ対局のペースは週2、3回にもなります。ましてや瀬戸市から東京や大阪へ移動する藤井四段にとっては出席日数を満たすのも大変。
推測になってしまいますが、学業と将棋の両立が難しくなってきたら高校中退という可能性もあるのではないでしょうか」(前出の松本氏)

天才棋士の悩ましき日々は続く――。

「週刊新潮」2017年11月16日号 掲載
http://news.livedoor.com/article/detail/13902228/