(続き)

「他のスポーツと比べて野球の競技人口減少スピードが速くなっているのは、球団経営という観点からも非常に危機意識があります」

 横浜DeNAベイスターズの岡村信悟社長は、未就学児への普及振興プロジェクトの会見でそう語った。

ベイスターズは野球人口減少に危機感を膨らませ、未就学児への普及振興プロジェクトを開始。岡村信悟社長(右後ろ)と三浦大輔元投手(左後ろ)が子どもたちに野球の楽しさを伝えた
http://contents.newspicks.com/news/2603459/images/204016.jpg

 さらに、埼玉西武ライオンズ事業部の市川徹次長は最悪のシナリオを描いている。

「(競技者減少でプロ野球の)レベルが下がることによってチケットが売れなくなる、グッズが売れなくなる、放映権が売れなくなるというのが最終的にあると思っています。
もちろん、球場に見にくる人もいなくなるのでは、と。つまり、プロ野球が商売として成り立たなくなるという状況に、将来的に陥ってしまうのではと感じています」

 2017年のプロ野球は、多くのスタジアムが活気にあふれていた。選手たちが高いパフォーマンスを披露し、ビジネスサイドが魅力ある仕掛けを施し、魅了されたファンが足繁く通う。それが現在のプロ野球の姿だ。

 しかし、現状が「未来のバロメーターにはならない」と市川次長は警鐘を鳴らす。

「観客動員が増えたからといって、野球人気があるとは思っていないです。球場に来るファンの延べ人数は増えているけれど、実人数が増えていないことはわかっています」

 少なくとも西武では、リピーターに支えられる一方、新規ファンは思うように伸びていない。すでにプロ野球のファン層が固定されてきたとすれば、今後新しいマーケットを開拓できなければ先細りとなる。
小・中学生の野球少年は10年後に重要な顧客となる可能性が高く、ここの人数が減っているのは極めて重大な問題だ。

 多くのプロ野球関係者やメディアは野球人口減少の事実に気づいていないか、それが意味するものをわかっていないか、将来的なダメージを見て見ぬふりだが、このまま放っておけば、遠くない将来に“野球消滅”につながっても決して不思議ではない。

 その予兆と言えるものこそ、日本全国の町や村で行われてきた少年野球の競技人口減少だ。地域の子どもたちとその家族、そして熱心なおじさんコーチたちが地元でコミュニティを形成してきたが、旧来的なあり方は限界を露呈しつつある。
だからこそ、日本全国で野球人口は減り続けている。

 さらに言えば、全日本軟式野球連盟は重要な事実を公表していない。冒頭に掲載した小学生野球人口の数は、まったくのデタラメなのである。

(デザイン:久喜洋介、バナー写真:写真:iStock/briancweed、文中写真:中島大輔)

※#01に続きます。

野球消滅
#00 【新】野球少年激減。プロ野球ビジネスが成立しなくなる日
https://newspicks.com/news/2603459
#01 侍ジャパン“崩壊”。なぜ野球界は一つになれないのか
https://newspicks.com/news/2603721
#02 少年野球の“構造的欠陥”。タイムリミットはあと3年
https://newspicks.com/news/2603748
#03 坊主禁止&ストップウォッチ。激減する中学軟式野球部の復活策
https://newspicks.com/news/2603733
#04 【教育】元プロが経済視点で算出。論理的“勝利至上主義”
https://newspicks.com/news/2603735
#05 AI時代に野球界が考えるべきこと。「教育って何ですか?」
https://newspicks.com/news/2603737
#06 習いごとの若年化。過熱する、未就学児の“奪い合い”
#07 嫌々引き受けた“素人顧問”が変える、野球界の固定観念
#08 ボトムアップでどこまで変えられるか。野球有志の挑戦