「真央さんには神様が宿っている」浅田真央展にファンが熱視線〈週刊朝日〉

 大型スクリーンに映し出される真央さんの過去の演技を見ながら、ハンカチで涙をぬぐう人がいる。すすり泣きの声も聞こえる。

 東京・日本橋高島屋で9月に開催された「美しき氷上の妖精 浅田真央展」。

 会場内のスクリーンルームは平日なのに立ち見の人が通路まであふれている。15分ほどの映像が終わると、拍手が湧き起こった。

 スタッフによると、ある70代の女性は13日間の開催中、6日間も足を運んだという。ボードには3回も真央さんへのメッセージを書いた。

 会場に一人で来ていた93歳の女性は、

「真央さんには神様が宿っている」

 と感想を述べたという。

 50代の女性は、真央さんがこの先どんな選択をしてもずっと応援していきたいという。引退は残念だったが、真央さんが13歳ぐらいのころからずっと見てきたので家族のような気持ちで引退の決断を受け入れた。

「真央さんって、あえて困難な道を選びますよね。できないかもしれないところに挑んでいくというその生き方は、すごい」

 40代の女性は、真央さんを見ているだけで泣けてくるのだという。

「ね。これは何なんでしょうね。真央さんの全てに心動かされる」

 埼玉から来た男性(65)は、真央さんと同じくこの日が誕生日。

「彼女はやり遂げた。おじさんは、励まされた」

 会場で流していた映像の真央さんのコメントに感動したという。その言葉とは、

「覚えているのは、引退会見が終わって外に出たとき、すごい桜が満開に咲いていて、祝福してくれているのかな、と」

 引退会見が行われた4月12日を、真央さんの衣装デザイナーの安野ともこさんはこう振り返る。

「あの日、あの会見で、満開の桜が真央さんの後ろに見えたんです。最後に去っていく姿は、満開の桜が散って、桜吹雪の中を去っていくようでした」

 10月18日から29日まで開催の横浜高島屋での展示会初日には新潟米コシヒカリの「まおむすび」を販売、200個がわずか10分で完売したという。

 オープンと同時に会場入りした記者も、出口付近で売られていると知らずに、買い損なってしまった。せめてパンフレットだけでも、と手を伸ばすと、同じような人が横から背後から、チラシだけでも、と受け取っていく。

 購入した真央グッズの紙袋を両手に抱えた37歳の会社員の女性に「真央さんのどんなところが好きですか」と話しかけると、瞳がみるみる赤くなって涙ぐんだ。

「いつもひたむき。くじけないですよね。彼女の頑張りが私の原動力」

 高島屋宣伝部の担当者は言う。

「ここまで愛されるスケーターは出ないでしょうね」

 初めての真央展は2014年に開催した。真央さんがショートで出遅れながらも感動のフリーで挽回、6位入賞をしたソチ五輪の後だ。2週間で18万人を動員し、8階の会場に入ろうと並ぶ人の列は1階まで続いた。

「大変混雑したのにクレームがほとんどなかったんです。いらっしゃった皆さんにとって真央さんは、妹だったり孫だったり、家族みたいな存在なのでしょう。真央さんには、そんな優しさを持てるのでしょう」

 二つの会場を取材して、引退してもなお、真央さんに思いを重ねている人がたくさんいる、という実感を持った。(本誌・大崎百紀)

※週刊朝日 2017年11月10日号より抜粋
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20171101-00000070-sasahi-spo