10月31日、11月10日のブラジル戦、14日のベルギー戦に臨む日本代表メンバーが発表された。本田圭佑、香川真司らが選外となるいっぽう、浦和レッズで好パフォーマンスを見せている長澤和輝が初招集。今回の25人を選んだヴァイッド・ハリルホジッチ監督の意図はどういったものなのだろうか。対戦相手との兼ね合いから読み解く。(文:河治良幸)

強豪国との対戦で測れる“現在地”

 日本サッカー協会は11月10日のブラジル戦、14日のベルギー戦に臨む日本代表メンバー25人を発表。本田圭佑、岡崎慎司、香川真司らが外れた一方で森岡亮太が3年ぶりに復帰、長澤和輝が初選出された他、西川周作、興梠慎三、三浦弦太が復帰した。

 新しい選手のテストといった要素もあるが、第一には現段階でブラジル、ベルギーとの対戦をシミュレートした場合に勝利の可能性を少しでも高められるメンバーという意味合いが強いだろう。

 全体的にはコンディションに寄せている印象もあるが、膝に不安を抱える長谷部誠が復帰し、継続的に出場しているものの好調とは言えない大迫勇也などは引き続き招集している。

 メンバー発表会見ではっきりしたのは前段階で指揮官が対戦相手の研究をかなり進めており、2試合をシミュレーションしているということ。コンディション面など合宿で選手をチェックしてから最終的なスタメンを決定するが、ブラジル戦とベルギー戦それぞれ採用するオーガナイズ(基本的にはシステムと同義)、起用する選手を想定しているはず。それだけ“本気モード”ということだ。

 相手がどこでも事前にスカウティングして長所や弱点を見出すタイプの指揮官ではあるが、今回その熱意がさらに高まっていることは会見での両国の説明からも見える。それだけ本気で勝ちに行って、そこで見える“現在地”を本大会に向けた残り半年間につなげていくということ。そのための実用的なメンバーということだ。

 特に“守備的MF”にカテゴライズされる選手を4人も選出しており“攻撃的MF”の枠にボランチもこなせる倉田と新戦力の長澤を入れていることから、ブラジル戦もベルギー戦も中盤での守備が生命線になると考えていることは間違いない。

 長谷部をこのタイミングで呼んだのはキャプテンということ以上に、中盤がシビアな戦いになる中で、攻守をオーガナイズでき、ゲームコントロールに優れる選手が必要になると考えているからではないか。

●「もしかしたら10回のうち、1回だけ勝つチャンスがあるかもしれない」

 ヴァイッド・ハリルホジッチ監督が「私の中では世界の2強国ととらえている」と評価する相手との連戦について、世間的に大敗を予想する声もある。むしろ、ここで強国との差を見せ付けられた方が本大会に向けて多くの課題が明確になり、本大会に向けてプラスになると言う意見も目にする。

 実際に予選突破したオーストラリア戦の後に、酒井宏樹が11月の2試合についてこう語っていた。

「いいチャレンジの場なので、悪いことが出た方がいいと思いますし、もっとトライして、こういうところもあるんだというのを再確認できればいいと思いますし、色んな失敗をすればするほど修正できる時間もあるので。本大会で結果を出せることが大事」

 今あるベストをぶつけて、本大会に向けた課題を確認できる絶好の機会と捉えれば、どんな結果であれポジティブに受け入れることができるが、ハリルホジッチ監督のスタンスを考えれば、現時点でも大敗は考えにくい。

 なぜならば相手に関係なく固定的なスタイルをぶつけるのではなく、相手のスカウティングに基づいて対策を立て、長所を消し、弱点を突く戦い方を選択するからだ。

「もしかしたら10回のうち、1回だけ勝つチャンスがあるかもしれない。そういった1回にしたい。そういう準備をしたい」と語る指揮官は2つの試合を異なるオーガナイズで臨むことを示唆している。ともに“格上”の相手となるが、それぞれ特徴が異なり、対策もまた違ってくるためだ。

 もちろん、その中で国際経験や代表キャップの少ない選手を起用すれば未知数の部分は大きくなる。実際にそうした選手は強豪国を相手に実力を発揮できるか試されるが、あくまで今回のメンバーでできる勝利のための対策を施して、そこから得られる内容や結果を次につなげていくということになる。

つづく

11/2(木) 15:40配信 フットボールチャンネル
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