【最新シネマ批評】
映画ライター斎藤香が最新映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、レビューをします。

今回ピックアップするのは、沼田まほかるのミステリー小説を映画化した作品『彼女がその名を知らない鳥たち』(2017年10月28日公開)です。

沼田まほかるの原作小説を映画化した作品には、このほか2017年9月に公開された『ユリゴコロ』(吉高由里子、松坂桃李、松山ケンイチ出演)があります。

今回のヒロインも「ユリゴコロ」同様にゲス女です。というか『彼女がその名を知らない鳥たち』に登場する男女は、すべて最低人間ばかり。けれども、これが思いがけない感動作なのです。

【物語】
十和子(蒼井優)は、同居している陣治(阿部サダヲ)に生活の面倒を見てもらいながらも、彼のことを足蹴にしています。

十和子は行方不明になった昔の男・黒崎(竹野内豊)を忘れられないまま。しかし陣治は、十和子にどんなに冷たくされても、彼女のことをとても大切にしていました。

ある日、十和子は、デパートへのクレーム電話をきっかけに時計売り場の水島(松坂桃李)と知り合い、妻子持ちの水島とたびたび体の関係を結ぶ仲に。

そんな十和子を隠れてじっと見つめる陣治。彼はずっと十和子をストーカーしていたのです……。

【ゲス女が求める偽りの幸福】
こんなにゲスが集まる映画も珍しいのですが、まずヒロインの十和子。
陣治の家に住み、金をもらい、生活を支えてもらっているのに陣治を毛嫌いし、暇さえあればクレーム電話ばかりかけています。

そのクレームがきっかけで知り合った水島とは、すぐ体の関係に。
水島に嫌われたくなくて、陣治が十和子のために必死で働いたお金を「いつも払ってもらっているから」と彼に渡しちゃうんですよ。ひどくないですか!

水島と不倫する一方で、十和子は過去の男・黒崎のことが忘れられず、二人の思い出DVDをこっそり見ています。
そんな十和子に姉(赤澤ムック)は「あの男のことは忘れて。ひどい目にあったでしょう」と言いますが、黒崎は行方不明ゆえに、彼女は黒崎のことが気になって仕方がないのです。

そんな風に常に男がいないと生きていけない十和子は、歯の浮くような言葉と体を重ね合うことが愛だと信じ、美しい男とのフワフワした現実離れした幸福を求めています。

だから十和子は、陣治のことが嫌いなんですよ。薄汚れた服装で不潔な陣治は、常に厳しい現実を突き付けてきますからね。「私にはこんな男しかおらんのか!」と思っちゃうんです。

http://news.livedoor.com/article/detail/13816272/
2017年10月29日 11時0分 Pouch

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