長崎、快進撃の要因はジャパネットの支援のみにあらず。経営危機乗り越えJ1昇格争いの舞台裏

 4月から株式会社ジャパネットホールディングスのグループ会社として再出発し、現在3位(※原文ママ。最新順位は2位)とJ1昇格を射程圏内に捉えているJ2のV・ファーレン長崎。
今春には経営危機の問題が浮上したクラブだが、快進撃の要因はなんだろうか。クラブ発足以来長崎を追い続けるライターが、その舞台裏を解き明かす。(取材・文:藤原裕久)

■経営危機の発表直後、監督がキャプテンに伝えた一言

 開幕前に「V・ファーレン長崎がJ1自動昇格圏を争う」と話したとして、信じる人はどれだけいただろう? 2月にクラブの経営危機とコンプライアンス問題が表面化し、
一時は存続も危ぶまれたクラブが、Jリーグでのクラブ最多勝点記録を更新し、名古屋、福岡といったJ1からの降格組と互角の戦いを繰り広げているのだ。信じろという方が難しい。

 この予想外の躍進について多くの人は、クラブがジャパネットホールディングスのグループ会社となり、高田明社長を迎えたことの影響を理由にあげることだろう。

 確かにジャパネット体制となってからクラブは変わった。クラブ消滅の危機は去り、スタジアムのムードも明るくなり閉塞感もなくなった。こういった変化のおかげで安心して戦えるようになったことは、間違いなくチームの大きな後押しとなっている。

 だがプロの世界は実力というベース無しに走り続けられるほど甘いものではない。どれほどジャパネットグループの支援という後押しがあったとしても、リーグを戦い抜くだけの力がなければプロの世界で躍進はありえない。
そして、その力を培った裏側には、高木監督の強い覚悟と周到な準備、そして選手たちの積極的な取り組みがあった。

「現場は俺が守るから、お前らは何も心配するな」。2月8日の夜、クラブが経営危機を発表した直後、一報を知った高木監督は、キャプテンの村上祐介に連絡を入れそう伝えたという。

 この時点でクラブから現場の人間には何も伝えられていない。そんな中、メディア報道で選手たちが事実を知るようなことになれば、チーム内に動揺が走ることは免れられなかったろう。

 このとき、監督のいち早い対応がなければ今の躍進があったかはわからない。当時を知る人物は、このときの素早い対応についてその背景に監督の覚悟があったと指摘する。
後にクラブは、経営面以外でも複数の問題が露呈していくこととなるのだが、以前からクラブ内の微妙な空気感は現場でも感じることが多かったとされ、監督契約の更新に際して、高木監督も熟慮した上で、相当な覚悟をもって続投を決めている。

■例年以上に高木監督が配慮した「一体感作り」

 それだけに監督の「現場を守る」という思いは例年以上に強かった。事実、今季の高木監督は例年以上に選手やチームの一体感作りに配慮した。

 誕生日を迎える選手がいればケーキを準備し、居残り練習では個別指導を行ない、練習中に率先して手を叩いてムードを盛り上げるなど、徹底的にチームを守る姿勢を崩さなかった。
それがチームを例年以上に強くまとめあげ、リーグが進むほどその結束力をチーム力へと変える原動力ともなっていた。

>>2-5あたりに続く)

フットボールチャンネル 2017年10月26日(Thu)10時19分
https://www.footballchannel.jp/2017/10/26/post237442/
画像:V・ファーレン長崎を率いている高木琢也監督
https://img.footballchannel.jp/wordpress/assets/2017/10/201710261_takagi_getty.jpg
画像:長崎のDF村上祐介。チームのまとめ役になっている
https://img.footballchannel.jp/wordpress/assets/2017/10/201710262_murakami_getty.jpg
画像:今年4月から長崎の社長を務めている高田明氏
https://img.footballchannel.jp/wordpress/assets/2017/10/201710263_takata_kaieda.jpg

■J2暫定順位表(2017/10/28(土)18:01更新)
1位 38試合 80 +23 湘南(1試合少ない)※J1昇格決定
2位 39試合 71 +11 長崎 ★
3位 39試合 69 +17 福岡
4位 38試合 66 +18 名古屋(1試合少ない)
https://www.jleague.jp/standings/j2/