将棋界、若手が台頭 羽生1強から戦国時代に
2017/10/23付 日本経済新聞 夕刊
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初タイトルを獲得した中村太地王座(右)と一冠に後退した羽生善治棋聖(11日午後、横浜市)

 将棋界で世代交代が進んでいる。11日に中村太地新王座(29)が誕生、7つのタイトルを6人が分け合う戦国時代に入った。一時は七冠を独占した羽生善治棋聖(47)は一冠に後退した。

 「勝負の世界なので、実力は実力として受け止めなければいけない」。11日夜、通算24期保持した王座のタイトルを失った羽生は一冠に後退したことについて問われ、声を絞り出すようにして答えた。

 羽生は1991年3月以降、常にタイトルを持ち続けている。96年には王座のほか、竜王、名人、王位、棋王、王将、棋聖という7つのタイトルを同時に保持。前人未到の七冠独占を果たした。
その後も複数タイトルを長らく持ち、2004年には王座のみの一冠に後退したが、わずか3カ月弱で二冠に復帰した。

■二冠復帰なるか

 今回、13年ぶりの一冠に後退したとはいえ、羽生は年内に二冠に復帰する可能性もある。20日に開幕した今期の竜王戦に挑戦しており、棋王を併せ持つ渡辺明竜王(33)からタイトルを奪還すれば、竜王通算7期となり「永世竜王」の資格も得る。
すでに6つのタイトル戦で永世・名誉称号を持つ羽生には「永世七冠」の偉業達成もかかる。

 将棋界は長く続いた羽生1強時代から圧倒的な第一人者がいない時代に入った。
昨年、初タイトルを獲得した佐藤天彦名人(29)や、平成生まれの棋士で初のタイトル保持者となった菅井竜也王位(25)は、いずれも羽生からタイトルを奪っている。それに同じ20代の中村が続いた。

 こうした若手の台頭について、羽生は9月に催された棋聖の就位式で「若い世代と顔を合わせることが増え、その時代の波をひしひしと感じる。
現在の将棋のルールになって400年以上たつが、日々進歩しており、内容的にはここ2〜3年で大きく変わり、過去の経験や実績が生かしにくくなっている」と述べた。
名人でさえ歯が立たないほど進化した将棋ソフトの登場もあり、これまでの定跡や判断基準が通用しにくい状況になっているとの考えがにじむ。