初戦に負けたら、突破確率0%。

 これはロシアW杯アジア最終予選で、日本が初戦のUAE戦で敗れたことによって、何度も何度も耳にしたデータだ。それでもハリルジャパンは見事にジンクスを覆し、ロシア行きの切符を勝ち取った。W杯本大会への第一歩となった10月6日のニュージーランド戦も、苦しみながら2-1で勝利。これでヴァイッド・ハリルホジッチ監督就任以来の戦績は、19勝7分4敗(国内組だけで臨んだ東アジアカップを含む)。悪くない数字に見える。

 ところが全30試合の中身を調べてみると、再び嫌なデータが見つかった。

 先制されたら、勝率0%。

 アジア最終予選では全10試合中9試合で先制に成功し、勝ち点20を積み上げた。一方で、唯一相手に先制ゴールを許したサウジアラビアとの最終戦は、0-1で敗北。前半は何度も好機をつくったものの、決めきれず。高温多湿の環境も影響し、後半は足が止まった。これ以外にも、先制された全4試合で逆転に成功した経験は、ない(3分1敗)。

最終予選で勝ち越し点を奪えたのはイラク戦のみ。

 現在の日本代表は、典型的な先行逃げ切り型のチームだ。事前に対戦相手の戦略を徹底的にスカウティングし、それに応じた厳しい守備と、鋭い速攻で試合のペースを握る。アウェーでは守備ブロックを組んで自陣に引き込み、ホームでは高い位置から激しくプレッシャーをかけて相手のポゼッションを封じた最終予選でのオーストラリアとの2試合は、典型例だろう。

 裏を返せば、劣勢の展開になったときに、ゲームの流れを変えることができない。実際、先制後に同点に追いつかれた最終予選4試合のうち、勝ち越しゴールを奪えたのは、吉田麻也を最前線に上げるパワープレーが奏功したホームでのイラク戦のみ。アジアでの戦いですらこうなのだから、チーム全体として試合の流れを変えるためのオプションづくりは、W杯本番に向けた大きな課題と言えるだろう。

W杯本番では断念したがザックは3-4-3を模索した。

 「試合の中で顔を変えるためだ」

 これは、ブラジルW杯で日本代表を率いたアルベルト・ザッケローニ監督が、3-4-3のシステムを試す意図について語っていた言葉だ。ザックジャパンでは、本田圭佑や香川真司の守備での負担を減らし、よりサイド攻撃を強調するために、親善試合で何度も3-4-3のシステムをテストした。結果的に選手の理解度が上がらず、W杯本番で使うことを断念したが、退場者を出した相手を攻めあぐね、スコアレスドローに終わったギリシャ戦を見るかぎり、3-4-3のオプションは最後まで捨てるべきではなかった。

 チームの「顔を変える」ための方法は、大きく分けて2つある。ザッケローニ監督のようにシステムを変えてチーム全体の顔を“整形”するパターンと、システムはそのままに、人を入れ替える"部分メイク"で顔の印象を変えるやり方だ。

 南アフリカW杯で日本を指揮した岡田武史監督も、“整形手術”に踏み切った。大会直前のコートジボワールとの強化試合で、中盤の5人をフラットに並べるシステムを試し、本番でも採用した。ザッケローニ監督の3-4-3と異なり、より守備重視の顔にするための決断だったが、これが本大会でのベスト16進出につながったのは間違いない。

つづく

Number 10/10(火) 11:36配信 
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20171010-00829032-number-socc