東京の一部とはいえ、見かけた方もいるだろう。JR京浜東北線の車内に、野球日本代表「侍ジャパン」の中吊り広告が27日から掲示(10月3日まで)されている。

 「一般の方に試合の認知度と、監督をもっと知ってもらおうというのが意図です」

 そう説明するのは、侍ジャパンの運営会社ではあるNPBエンタープライズの関係者だ。30日からは中央総武線(各駅停車、10月6日まで)にも登場する中吊りは、横長の赤地につり革の間から稲葉篤紀監督の引き締まった横顔と背中の「INABA」の文字が浮かぶ。11月に稲葉ジャパン初陣となる「ENEOS アジアプロ野球チャンピオンシップ2017」(11月16日開幕、東京ドーム)の告知とチケット販売を伝えるものだ。実は2012年に侍ジャパン常設化以来、電車の中吊り広告を出すのは初めての試みだという。

 3月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の盛り上がりはいまだ記憶に新しいところだが、侍ジャパンの“興業”には難しい側面もあるのは事実だ。20年の東京五輪で金メダルを目指すため新監督は決まったが、さすがに3年先はまだ遠い。それでも新体制はなんとかアピールしたいのだが、今回はWBCが終わったばかりのため、メンバーはU−24(24歳以下、オーバーエージ枠も採用)。対戦相手も韓国、台湾と新鮮味も乏しい。NPBエンタープライズの「発想の転換で中吊りに挑戦してみた」という切なる気持ちも理解できる。

 24歳以下にも各球団でレギュラークラスはいるが、選ばれるであろう選手にはブレーク寸前の若手も少なくない。ならば、そこを逆手に取ればよかった。

 たとえば、選手を予想して当選者の中から試合に招待するとか、ファン投票をやってもいい。自分が推した選手が出場するとなれば、見方も変わろうというものだ。真剣勝負ではあるけれど、プロ野球だって立派なエンターテインメント。試合前練習の公開やサイン会などを行えば、より身近に感じられる。ファン拡大の入り口になるかもしれない。

 もちろん東京五輪の主力選手になる可能性もあり、3年後には「伸びると思ってたんだよ」なんて吹聴できるかもしれない。成長株を見いだす楽しみもある。(芳賀宏)

http://www.sanspo.com/baseball/news/20170929/npb17092913000005-n1.html