「連続防衛」と「複数階級制覇」。
ボクシング界には、称賛される2つの価値観がある。


 15日にWBC世界バンタム級王者の山中慎介(34)=帝拳=が国内最多タイ記録となる13度目の防衛に失敗したことで、浮き彫りになったのが連続防衛の難しさだ。
その一因となるのが、当たり前だが、1度の負けも許されないこと。世界記録の25度の防衛を果たしているヘビー級のジョー・ルイス(米国)は11年以上も王座に君臨した。
長期間、王座を守り続けるために必要なのがウエートの維持。防衛を重ねれば、確実に加齢する。
加齢に反比例するように代謝量は低下し、体重を落とすのが厳しくなる。
減量の幅が大きくなり、無理な減量をすれば、コンディションを崩しやすくなる。
本来のパフォーマンスができなくなれば、王座から陥落する危険性もある。

 一方、複数階級制覇は、連続防衛の厳しさとはほぼ無縁だ。
階級を上げれば、減量の苦しみから解放されるし、獲得した王座を失っても、次の階級がある。
こう見ると、連続防衛に軍配が上がりそうだが、複数階級制覇ならではの困難もある。
増量でパワーアップするが、その半面、スピード、反射能力が低下しやすく、同じファイトスタイルで維持し続けることが難しくなる。
フライ級(50・8キロ)からSウエルター級(69・8キロ)のうち6階級を制覇したマニー・パッキャオ(フィリピン)はほぼ同じスタイルを貫いていることが高く評価されている点だ。

 現在のボクシング界では、より高額なファイトマネーを得やすい点などから、複数階級制覇が主流になっている。
パッキャオの最多防衛はIBF世界Sバンタム級の4度。
長い歴史の中で、連続防衛と複数階級制覇と同時に成し遂げたボクサーはいない。
両者がトレードオフの関係にある以上、無理に優劣を付ける必要はないだろう。

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