「らしくなってきた」と言えるのかもしれない。 風間八宏監督率いる名古屋グランパスのここ3試合のスコアを見ての感想である。

 7-4、5-2、4-3と、この3試合で奪ったゴールは「16」と、1試合平均で5.3点を叩き出している。徹底的に攻撃的なサッカーにこだわる風間監督が作るチームらしい。

 とはいえ、一方で失点も「9」、1試合平均3失点と看過できない数字になっている。

 直近28節の町田ゼルビア戦では、立ち上がりから相手のプレスに対して、後手に回り先制を許すも、その後は徐々に主体的な試合運びでリズムを掴む。3?1までひっくり返してこの2試合の大量得点が偶然の産物でないことを証明した。

 しかし、後半は完全に相手の力強い攻撃を前にボールを保持させてもらえず、2失点を喫して試合を振り出しに戻された。4点差から一時イーブンにされた愛媛戦に続き、複数得点差を追いつかれてしまったのである。

 両試合とも結果的に決勝点を奪って勝点3を手にしたものの、やはりリードを追いつかれたところに目が行ってしまうのも事実だ。ただ、それ対して風間監督はこう言った。

「試合ですから、相手より1点でも多く取れれば良いわけで。 1-0もそうですし、4-3も同じかと思います。問題があるとすれば、自分たちのやり方を変えて取られているというところ。そこはしっかりと見ていきたいと思います」

 つまり風間監督は、2点のリードを“守れなかった”ことを問題視しているわけではない。後半に関して言えば、相手にボールを奪われずに自分たちの攻撃を貫けなかったことが問題点なのだ。そこに目を向けるあたり、指揮官がどのようなチーム作りをしようとしているのかが見て取れる。

 今季、名古屋へ完全移籍を果たした八反田康平は筑波大学蹴球部で4年間、風間監督の薫陶を受けてきた選手だが“風間サッカー”の理解度が高い彼はこう語る。
「(風間監督の就任当初は)筑波の時も追いつかれることはあったし、フロンターレもそういう試合がありましたよね。でも、こうやって成長していくのだな、と」

 苦笑いをしながらこう語っていたが、ある種これは通るべき成長痛のようなものであるのだろう。

 川崎フロンターレ時代もそうであったが、風間監督は段階的にチーム作りを進めていく。そのなかで、まずはボールを奪われないこと、ゴールを奪うこと、崩すための解を持つ、という部分に焦点を当ててアプローチをする。

 守備の組織を作って……、というところから始める監督も多くいるが、そもそもサッカーは点を取らなければ勝てないスポーツだ。だからこそ、“どうゴールを奪うか”というところからスタートして作り上げていくのは理にかなっている。

 ただし、選手への要求はハイレベルだ。

「動きの質や密集のなかでもフリーを見つける目、そのなかでボールを扱える技術。これが揃っていかないといけないし、揃わないとできない。だから、そのタイミングがどんどん変化しているので、そこにどう付いていくか。そこでどう自分たちが作っていくか」
 指揮官はそう語るが、求める要素が“揃う”までにはどうしても時間を要するのだ。

 しかし、監督の求めるプレーを体現できるガブリエル・シャビエルと新井一耀というふたりの選手が加入したことで、その成長速度は一段と高まった。やはりチーム内で、先頭に立ってあるべき姿を見せられる選手は必要だ。それぞれのポジションで両者が見せるパフォーマンスは、他の選手たちの成長を早めている。

 一番上に立つ者をより伸ばすことで、下の選手に刺激を与え成長を促すことでチーム力を高めるのが風間監督のスタイルでもある。チーム関係者も「2人が入ってくれたことはすごく大きい」と言う。小林裕紀は本来のポジションであるボランチに戻り、好パフォーマンスを見せている。青木亮太もこのサッカーの中で持てる力を存分に発揮し、4試合連続ゴールを決めている。

 これからも“伸びてくる”選手は間違いなく現われるはずだ。名古屋は間違いなく後半戦のJ2を面白くするチームになるだろう。

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