試合中、FWルーカス・ポドルスキは盛んにチームメイトに向かって声を上げていた。

 何を言っているのか、その言葉がスタンドまで聞こえてくることはなかったが、ピッチ上で時折見せるジェスチャーから察するに、背番号10が気持ちよくプレーできていないことは明らかだった。

 8月13日に行なわれたJ1第22節、FC東京vsヴィッセル神戸。大きな注目を集めて神戸に移籍加入したポドルスキにとって、これがJリーグでの4試合目になる。

 新しいチームに加わって4試合目という数字が、「もう」なのか、「まだ」なのかは、一概に判断できないが、ポドルスキに関して言えば、「まだ4試合目」と納得するしかないのだろう。

 率直に言って、この日のポドルスキは(ピッチ外の私生活ではともかく、サッカー的には)まったくと言っていいほどチームに入れておらず、ワールドクラスには程遠いプレーしか見せていない。2ゴールで神戸に勝ち点3をもたらした衝撃のJデビュー戦も、今となっては「たまたま」の感が強くなる。

 3−4−1−2の布陣における、2トップのひとりとしてピッチに立ったポドルスキ。だが、攻撃を組み立てようにも、なかなか前にボールが進まない状況にしびれを切らし、ポドルスキは再三、低い位置まで下りてきた。

 ボールを受けてさばくことを繰り返しながら、自らタイミングを見て縦パスを入れ、攻撃をゴール方向へスピードアップさせる。そんなプレーを何度か試みるのだが、なかなかうまくいかない。かといって、高い位置で待っていても、いい形で自分のところにボールがやってくることもない。その結果、フラストレーションをためた背番号10は、なかば観念したかのように、ピッチ上にたたずむ時間が長くなった。

 対戦したFC東京にとってみれば、それはまさに思うつぼだったに違いない。

 試合前の段階で、ポドルスキが「(攻撃が)うまくいかないと、下がってボールをもらって(攻撃を)作りにくるという情報はあった」(FC東京・MF室屋成)。それを前提に「ミーティングでも、監督から『ポドルスキが下がって受けるのはオーケー』だと。逆に『その回数が多くなるようにさせよう』と言われていた」(FC東京・DF徳永悠平)という。

 FC東京にしても、「ポドルスキ封じ」と呼ぶほどの特別な対策を講じたわけではない。室屋は「(ポドルスキに)ボールが入ったときには怖さがあった。左足でシュートを打たせないよう意識した」と話すが、徳永が言うように「うまいけど、うちのDFラインに対して、それほど仕掛けてこなかったので……」というのが、実際のところだろう。いずれにせよ、FC東京が事前の分析に沿って試合を進め、ほぼ想定どおりの成果を手にしたことは確かだ。

 そもそも対戦相手うんぬんの前に、神戸自体がポドルスキをどう生かすのか、そのテーマに明確な答えを見つけられていなかった。

 神戸のネルシーニョ監督は、後半開始と同時にMF小川慶治朗からFWハーフナー・マイクへと選手交代した理由を、次のように話している。

「ルーカスが下りて起点になり、(FW渡邉)千真も(ポドルスキと)同じ高さでプレーしていたため、深みを取る選手がいなかった。ゴール前にターゲットが必要だと思い、マイクにははっきりゴール前に顔を出すよう伝えた」

 つまりは、前半の神戸はボールを保持することはできていても、選手が下がってくるばかりでゴール前に人がおらず、シュートチャンスを作れなかった。だから、選手交代によって、前線の選手を確保しようとしたのである。

つづく

8/15(火) 11:31配信 
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170815-00010004-sportiva-socc